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2022.6.24 Fri
<7月号プレビュー>
ウクライナ紛争の地政学
ウクライナ戦争をめぐってインドは中立の立場をとり、ロシアを非難するのを控えている。米政府高官たちもインドの行動に目くじらを立ててはいない。インドがロシアの軍事ハードウエアに依存していること、それを一夜にして解消できないことを理解しているからだ。しかし、ロシアが残虐行為を繰り返すなか、インドがロシアの原油や天然ガスを大量に購入し続ければ、ワシントンはニューデリーがロシアの戦争継続を可能にしているとみなし始めるだろう。本意ではなくとも、ニューデリーは、結局、ロシアと欧米のどちらかを選ばなければならなくなるだろう。(カーティス)
ウクライナにおける戦争の流れは、ますますロシアに不利な方向に推移しており、ロシアの壊滅的な敗北で終わることはほぼ間違いないだろう。10年に及んだアフガニスタン戦争では、1万5000人のソビエト兵が命を落とし、それが共産主義体制の崩壊を促した要因の一つとなったが、今回のウクライナ戦争では、最初の2カ月でそれを上回る数のロシア兵が命を落としている。実際、ロシア連邦安全保障会議がプーチンを解任する可能性もある。この場合、政治権力が崩壊し、最終的に市民派が権力を掌握するかもしれない。だが、プーチンが秘密警察の動員に成功して、ロシアを北朝鮮のような国に変える恐れもある。(アスルンド)
ロシアの戦争目的が、もっぱらウクライナの「非ナチ化と非軍事化」だった段階はすでに終わっている。ワシントンと同盟諸国政府が、ウクライナの主権と領土の一体性を守るための支援に関与を限定してきた段階も同様だ。双方の指導者たちは、越えられないはずの一線を越えてしまっている。いずれ、両国は、相手の重要インフラに破壊的なサイバー攻撃をかけたい衝動に駆られるだろう。現状ではその可能性は低いが、核兵器の使用やNATO軍の投入さえも、もはや想定外とはみなせない。エスカレーションを阻むガードレールがなければ、この新冷戦のロジックがどこに向かうか、分からない状況にある。(ブレマー)