Focal Points

2022.5.1. Sun

<5月号プレビュー>
ウクライナ危機
―― エスカレーションリスク

いまやプーチンの周りにいるのはイエスマンばかりだ。偽情報に囲まれた孤立した生活を送っているせいで、プーチンはNATOに対するパラノイア思考を高め、ロシア帝国再興の野望を妄想し、ロシアの軍事力に幻想を抱いている。しかも、ロシアのような個人独裁国家は、他の政治体制の国よりも常軌を逸した行動をとる傾向がある。実際、アメリカとNATOの指導者たちは、1962年のキューバ・ミサイル危機以降、全面核戦争をめぐる重大な危機に世界が直面していることを認識すべきだ。この危険な事態を回避するには、個人独裁体制がどのように意思決定を下すのかを理解し、それにいかに対処すべきかを学ぶ必要がある。(セーガン)

欧米が和解的であればあるほど、プーチンが妥協する可能性は遠のく。国家保安委員会(KGB)の情報オフィサーとして、「人間は金、イデオロギー、強制、エゴで動く」と彼はたたき込まれている。プーチンを倒すには、彼の恐怖心を煽り、資源を拡散させ、悪いことが起きるのではと不安がらせるアプローチが必要になる。ロシアやベラルーシ、チェチェン、カザフスタンなどで騒乱と対立を煽り、プーチンの権力掌握を脅かすことを欧米は考えるべきだろう。プーチンは長年にわたって、欧米諸国の足並みを乱れさせて政治構造に圧力をかけ、その焦点を(外ではなく)内側に向けさせる戦略をとってきた。アメリカはそれと同じ戦略をロシアに対してとる手段をもっているし、そうすべきだろう。(ロンドン)

軍事面でロシアが自制心を失っているのは事実だろう。一方、バイデン政権は、紛争に直接介入する意思はないと表明している。つまり、一方はエスカレートするのもやむを得ないと考え、他方はエスカレーションの回避を望んでいる。しかし、スパイラルとは、直接対決を望んでいない国同士でも、結局はライバル関係が激化し、戦争のリスクを冒すという悲劇性をもっている。しかも、ロシアの侵攻が続くなか、欧米の武器がウクライナに大量に流れ込み、制裁がさらに強化されるかもしれない。双方とも、さらに圧力を強めるつもりでいる。こうなると、一つの火種が大火へエスカレートしかねない。(アッシュフォード、シフリンソン)

論文データベース

カスタマーサービス

平日10:00〜17:00

  • FAX03-5815-7153
  • general@foreignaffairsj.co.jp

Page Top