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2022.10.29 Sat
帝国の衰退と歴史の教訓
―― 次にブラックスワン化する国は
米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。(カプラン)
国家の脆弱性の基準は五つ存在する。中央集権型の統治システム、画一的で硬直的な経済体制、過大な債務とレバレッジ、政治的硬直性、そして近い過去に衝撃から立ち直った経験をもっていないことだ。この基準に照らせば、世界地図は大きく違ってみえてくる。意外にもいつも混乱しているイタリアに脆弱性を示す兆候はない。政治危機が間欠泉のように吹き出すにも関わらず、うまく分権化されており、その都度、立ち直っている。一方、サウジは石油資源に経済を依存し、政治的に硬直的で、高度な中央集権国家だ。日本も「穏やかな脆弱性」を抱える国に分類できる。(タレブ、トレバートン)
西洋の帝国主義が一時的であれ、大きな流れを作り出せたのは、「強制力を行使する地域」と「相手の同意を求める地域」を明確に区別していたからだ。「パワー面で見劣りする国が相手なら力で支配できるかもしれない。しかし、相手が帝国のライバルとなると、周到な外交とうまく調整された協調が欠かせない」。これが当時の考えだった。このコンセンサスを無視して、ヨーロッパで帝国の建設を目指したヒトラーの試みは、悲劇を引き起こした。(ダンフォース)