Focal Points

2022.10.27 Thu

<11月号プレビュー>
地政学とグローバルな課題の衝突、習近平の本質、イランの反体制派運動

地政学的競争の激化は、温暖化に象徴されるグローバルな課題に関する国際協調をさらに難しくし、一方で国際環境の悪化が地政学的緊張をさらに高めている。しかも、アメリカはさらに弱体化し、世界への関心を失っている。グローバルな課題と世界の(細々とした)対応間の恐ろしいほどのギャップ、ヨーロッパとインド太平洋における大国間戦争リスクの上昇、イランが中東を不安定化させるリスクの拡大、これらが渾然一体となって、第二次世界大戦以降、もっとも危険な瞬間が作り出されつつある。伝統的な地政学リスクと増大する一方のグローバルな課題が共存する時代を乗り切っていくには、何が必要なのか。(ハース)

習近平は中国の政治派閥のすべてから反発を買っている。彼が伝統的な権力分配構造を破壊したことに憤慨し、その「無謀な政策が党の将来を危うくしている」と考えているエリートは少なくない。民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる統治スタイルへの社会の反発も大きい。いまや、天安門事件以降初めて、中国の最高指導者は政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面している。習近平が脅威を感じ、大胆な行動に出れば、ますます反発が大きくなるという悪循環が生じるかもしれない。(蔡)

22歳の女性が風紀警察による拘束中に死亡したことをきっかけとするイラン女性たちの抗議運動は、今後、大きな変革を引き起こすかもれない。ヒジャブの着用は、イスラム国家・イランのアイデンティティーのシンボルとされてきただけに、女性たちがヒジャブを脱ぐことを国が許せば、聖職者による支配構造が弱体化し、最終的には崩壊する恐れもある。「選挙で選ばれた」政府が、宗教エスタブリッシュメントに歩調を合わせるのをみてきた民衆は、もはや選挙で有意義な改革を実現できるとは考えてない。新たな社会契約が示されない限り、民衆の怒りは行き場を失い、政府との対決路線、反乱へ向かっていくかもしれない。(タバール)

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