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2022.10.12 Wed
迫り来るグローバル・リセッション?
―― インフレと為替と中央銀行のジレンマ
いまや、中国、アメリカ、ヨーロッパという世界経済の主要なエンジンのすべてが減速しつある。中国経済は実質的にリセッションに陥り、ヨーロッパ経済もエネルギー不足によって冬にはリセションに陥りそうだ。アメリカ経済も明らかに停滞に向かいつつある。グローバルな経済停滞が主要国におけるインフレ圧力をどの程度迅速に低下させるかが、今後考えるべき大きなテーマだろう。日米の中央銀行の政策ギャップが極端に大きくなり、円安が異常に進行していることも大きな懸念材料だし、金融引き締め政策をとっている諸国の通貨に対しても、かなりのドル高になっている。(セッツァー)
高い貯蓄率は借金頼みの経済成長を促すことで、中国の金融システムが現在抱える問題を生み出してきた。貯蓄が多いということは、消費が弱い(消費に回す資金が乏しい)ことを意味するからだ。このため過去20年間、中国経済の成長は内需ではなく、輸出または定期的な投資拡大によって支えられてきた。だが不動産デベロッパーもいまや債務問題に苦しんでいる。しかも、地方政府の歳入は、デベロッパーへの土地売却に大きく依存してきたために、現在の不動産不況で大きく圧迫されている。(セッツァー)
戦争と経済制裁のコストは、当初のインパクトが、欧米が期待したほど、そしてロシアが懸念したほど劇的でなかったとしても、今後、大きくなっていく一方だろう。今のところ、ロシアの指導者たちは、半年以上にわたって欧米の制裁を乗り切ったことに満足している。しかし、今後ロシアの産業は、欧米から輸入パーツを調達できない状況にいかに適応していくかに苦しむことになる。原油価格が上昇しない限り、モスクワは社会(財政)支出を続ける一方で、財政赤字や高インフレを受け入れるという、厳しいトレードオフに直面することになるはずだ。(ミラー)