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2022.1.19. Wed
エネルギーの地政学と中東関与
―― 軍事援助から社会経済支援へ
アメリカが中東との関係を終わりにしたいと考えているとしても、アラブ諸国が同様に考えているわけではない。アメリカの中東からの撤退は現実的でないだけでなく、地域の人々の生活を向上させ、より公正な政治秩序の構築に貢献するためにアメリカはどのように政策を調整できるかという重要な議論を妨げてしまう。巨大な軍事投資ではなく、現地の人々がより健全な生活を手に入れるのを妨げている社会経済問題や統治問題を解決するための投資を試みるべきだろう。(ケイ)
クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーへの移行が引き起こす地政学リスクを軽減する措置を講じないかぎり、世界は今後数年のうちに、グローバル政治を再編へ向かわせるような新たな経済・安全保障上の脅威を含む、衝撃的な一連のショック(非継続性)に直面するだろう。(ボードフ他)
中東のいかなる地域における衝突も中東全体を紛争に巻き込む引き金になる恐れがある。一つの危機をどうにか封じ込めても、それが無駄な努力になる危険が高まっているのはこのためだ。イスラエルと敵対勢力、イランとサウジ、そしてスンニ派の内部分裂が存在し、これらが交差するだけでなく、ローカルな対立と絡み合っている。「サウジに味方をすることは、(イエメンの)フーシに反対するということであり、それはイランを敵に回すことを意味する」。こうしたリンケージが入り乱れている。ワシントンが中東から撤退するという戦略的選択をしようがしまいが、結局、アメリカはほぼ確実に紛争に巻き込まれていく。(マレー)