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2021.7.16. Fri
米同盟国が核武装化するとき
―― 核開発の能力も資源もあるが
中国とロシアが核戦力を近代化し、強硬路線に転じるにつれて、アジアとヨーロッパ双方の米同盟諸国は軍事的脅威の高まりにさらされている。一方で「アメリカは長年の軍備管理合意から距離を置き、米市民も、もはやグローバルなエンゲージメントに前向きではない」と同盟諸国はみている。このために「自国の防衛と安全保障をワシントンに頼れるのか、それとも、核武装を考える時期がきたのか」と考え始めている。うまく対処しない限り、アメリカの同盟諸国は核武装を選択することになるかもしれない。(ヘーゲル他)
反核感情の強い日本の科学者コミュニティが(政府による)核開発の要請に応じるとすれば、安全保障環境が大きく悪化した場合に限られる。そして、日本の政策決定者たちが核武装を真剣に考えるとすれば、韓国が核武装するか、ピョンヤンが現在の核の兵器庫を温存したままで朝鮮半島に統一国家が誕生した場合だろう。一方で、日本が核開発に乗り出せば、北京は軍備増強路線を強化し、北朝鮮による対日先制攻撃リスクを高めるかもしれない。韓国が核開発に乗り出し、地域的な緊張が大きく高まる恐れもある。(フィッツパトリック)
ロシアによるウクライナ侵略、アメリカの対ロ政策の迷走、そして、欧州安全保障へのコミットメントに懐疑的なトランプ政権の誕生を前に、ベルリンの困惑とヨーロッパ安全保障への不安は高まった。「アメリカの核の傘による安全保障(の今後)に対する懸念を取り払う、独自の核抑止力の形成を検討すべきだ」と提案する者もいる。だが、この国の核武装には「ドイツ問題」という歴史問題が関わってくるだけでなく、EUを中核に据えてきた戦後ドイツの国家アイデンティティそのものが揺るがされる。しかも、ドイツが核戦力をもてば、EUとロシアの関係が不安定化するだけでなく、他の諸国が核開発を試みる核拡散の連鎖が生じる。・・・(クーン、ボルペ)
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米同盟国が核武装するとき
―― クレディビリティの失墜と核拡散の脅威2021年7月号 チャック・ヘーゲル 元米国防長官(2013―15) マルコム・リフキンド 元英外務大臣(1995―97) ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長 アイボ・ダールダー シカゴ外交問題評議会会長
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日本の核ジレンマと国際環境
―― 能力も資源もあるが・・・2019年11月号 マーク・フィッツパトリック 英国際戦略研究所 アソシエートフェロー
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ドイツにおける核武装論争
―― なぜ核武装は危険思想なのか2017年8月号 ウルリッヒ・クーン カーネギー国際平和財団 核政策プログラムフェロー トリスタン・ボルペ カーネギー国際平和財団 核政策プログラムフェロー