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2021.2.4. Thu
米中対立と東南アジア
―― 北京の影響下で
東南アジア諸国の対中認識は二つの考えの間で揺れ動いている。経済成長を中国の台頭に依存しているために、中国との貿易を続けたいと考える一方で、中国の強大化する経済力、外交力、軍事力を警戒している。実際には、中国と東南アジアの親密な関係を示唆する神話の多くは虚構のようだ。「ミャンマーが中国の衛星国のような存在になった」とみなすのは安易すぎるし、カンボジア人の多くも、中国の影響力拡大を警戒している。むしろ、東南アジアに共通しているのは、中国に傾斜することに対するリスクヘッジ戦略をとっていることかもしれない。・・・(マーストン)
インドネシア政府は民衆の対中不信に配慮しつつも、中国からの投資を求める路線をとってきた。だが、北京は他の東南アジア諸国同様、インドネシアに対しても高圧的な嫌がらせを続けており、周辺海域における安全保障環境が変化するにつれて、ジャカルタの曖昧な対中路線は持続不可能になりつつある。自国の領海及び排他的経済水域に対する中国の主権侵犯に対抗していくには、ジャカルタはクワッドメンバーとより緊密に協力し、東南アジアが中国の勢力圏に取り返しのつかない形で組み込まれていくのを阻止するための同盟強化を模索していくべきだろう。(コカ)
メコン川に流水の多くを供給しているヒマラヤの氷河は21世紀末までに温暖化によって消滅するかもしれない。上流の中国は下流のラオスとカンボジアにダム建設を働きかけ、いまやメコン川は中国がその利益とパワーを展開する主要な舞台と化している。しかも、流域諸国政府はメコン川の環境問題にほとんど配慮していない。要するに、流域コミュニティは気候変動の弊害、中国の地政学的野心、政府の環境問題への無関心という逆風にさらされている。(ギアル)