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2020.8.21. Fri
グローバルパンデミックとナショナリズム
―― 次のパンデミックに備えるには
パンデミックを前に、各国は国際協調ではなく、他の諸国とも世界保健機関(WHO)とも対立するナショナリスト路線をとった。WHOに対する批判もあるだろう。しかし、多国間システムが「必要なときに自律的に動き出すメカニズムではない」ことを認識する必要がある。どんなに専門知識や経験があって、いかに機構改革を実施しても、(メンバー国が)システムにおける政治的な方向性を示し、持続的なリーダーシップを発揮しない限り、多国間組織は効果的に動けない。(パトリック)
ワクチンが開発されて利用できるようになるか、多くの人が感染して集団免疫が達成されれば、現在の危機は終わる。しかし、ワクチンであれ、集団免疫であれ、それが短期間で実現することはなく、そこに至るまでの人的・経済的コストはかなりのものになる。しかも、将来における感染症アウトブレイクはより大規模で、致死性も高いはずだ。言い換えれば、現在のパンデミックは、世界のあらゆる疫学者や公衆衛生当局者が悪夢とみなす深刻な感染症(ビッグワン)ではおそらくない。次のパンデミックは、1918年のスペインかぜと同様に壊滅的な「新型インフルエンザウイルス」になる可能性が高い。(オスタホルム、オルシェイカー)
都市封鎖、行動規制解除後の感染率の推移は国ごとにばらつきがある。感染を封じ込めるほど十分長期にわたって封鎖や行動規制を続け、公衆衛生システムを強化し、レジリエンスを高め、社会にメッセージを適切に伝えた国は、日常生活への復帰後も壊滅的な事態には陥っていない。しかし、大した準備もせずに、経済・社会活動の再開に踏み切り、いまや大きなコストを支払わされているブラジルやアメリカのような国もある。社会・経済活動再開に向けたロードマップが存在することは安心材料だが、数週間から数カ月先にはそれを書き換える必要があるかもしれない。(ミックハウド、ケーツ)
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グローバルパンデミックとWHO
―― パンデミックと国際システムとナショナリズム2020年8月号 スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルガバナンス)
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次のパンデミックに備えるには
―― COVID19の教訓とは何か2020年8月号 マイケル・T・オスタホルム ミネソタ大学感染症研究政策センター ディレクター マーク・オルシェイカー ドキュメンタリー・フィルムメーカー 作家
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経済活動再開の恩恵とリスク
―― 感染率拡大の国家間格差はなぜ生じたか2020年8月号 ジョシュ・ミックハウド カイザーファミリー財団 アソシエイト・ディレクター (グローバルヘルス政策担当) ジェン・ケーツ カイザーファミリー財団 シニアバイスプレジデント (グローバルヘルス&HIV政策担当)