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2020.7.3 Fri
パンデミックと経済ジレンマ
―― 「経済か人命」か「経済も人命も」か
都市封鎖、行動規制解除後の感染率の推移は国ごとにばらつきがある。感染を封じ込めるほど十分長期にわたって封鎖や行動規制を続け、公衆衛生システムを強化し、レジリエンスを高め、社会にメッセージを適切に伝えた国は、日常生活への復帰後も壊滅的な事態には陥っていない。しかし、大した準備もせずに、経済・社会活動の再開に踏み切り、いまや大きなコストを支払わされているブラジルやアメリカのような国もある。社会・経済活動再開に向けたロードマップが存在することは安心材料だが、数週間から数カ月先にはそれを書き換える必要があるかもしれない。(ミックハウド、ケーツ)
今日、アメリカを含む先進国は、双子のショックの第二波としてパンデミックを経験している。2008年のグローバル金融危機、グローバルパンデミックのどちらか一つでも、各国政府は思うままに紙幣を刷り増し、借り入れを増やしたかもしれない。だが、これら二つの危機が波状的に重なることで、国の歳出能力そのものが塗り替えられつつある。これを「マジックマネー」の時代と呼ぶこともできる。「しかし、インフレになったらどうするのか。なぜインフレにならなくなったのか、そのサイクルはいつ戻ってくるのか」。この疑問については誰も確信ある答えを出せずにいる。(マラビー)
各国は、あたかも2020年夏まで経済生産がゼロの状態が続くかのような財政支出を約束している。ニューディールを含めて、このレベルの政府支出には歴史的先例がない。つまり、これは「ハイパーケインズ主義」の実験のようなものだ。このような試みがアメリカ経済、ヨーロッパ経済、世界経済を救えるかどうかは誰にもわからない。希望をもてるとすれば、パンデミック前の段階で対GDP比債務がすでに230%近くに達していたにもかかわらず、日本の金利とインフレ率が引き続き安定していたことだ。しかし、政府支出で永遠に現実世界の経済活動を代替することはできない。(カラベル)
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社会・経済活動再開の恩恵とリスク
―― 経済活動再開で生じた感染率拡大の国家間格差2020年8月号 ジョシュ・ミックハウド カイザーファミリー財団 アソシエイト・ディレクター (グローバルヘルス政策担当) ジェン・ケーツ カイザーファミリー財団 シニアバイスプレジデント (グローバルヘルス&HIV政策担当)
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「マジックマネー」の時代
―― 終わりなき歳出で経済崩壊を阻止できるのか2020年7月号 セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)
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財政支出でコロナ恐慌を抑え込めるか
―― ハイパーケインズ主義の実験と日本の先例2020年5月号 ザチャリー・カラベル コラムニスト