2020.6.5 Fri
<6月号プレビュー>
迫り来るアナーキー、米経済の復活とコロナショック、脱パンデミックの経済学
パンデミックの残骸のなかから、パックス・シニカが生まれたり、パックス・アメリカーナが再出現したりすることはあり得ない。米中対立が拡大するにつれて、多国間システムとそれを支えてきた規範や制度がすでに崩れ始めている。多くの多国間機関は、むしろ、米中のライバル関係の舞台と化しつつある。間違った決断をし、配慮を怠れば、2020年代は1930年代に回帰していく。(ラッド)
パンデミックショックが本格的な金融危機を引き起こせば、問題を抱える企業が世界中で債務不履行に陥り、最終的にはアメリカ金融帝国にとっても脅威となるだろう。しかし、巨大な公的債務だけでなく、ゾンビ企業が企業債務の10%を占める現在の中国は、そうした危機に対してアメリカ以上に大きな脆弱性をもっている。結局、経済成長にとってもっとも重要なのは生産年齢人口であり、アメリカではこれが依然として増大しているのに対して、中国では5年前から減少に転じている。アメリカが世界最大の経済大国の地位を失うことも、米中逆転も当面あり得ない。(シャルマ)
感染率の一貫した減少を待たずに経済活動を再開した国や州は、新たなアウトブレイク、死亡率の上昇だけでなく、長期的な経済的混乱というリスクを冒すことになる。経済活動の再開を焦るあまり、「経済活動を迅速に再開するためなら、救える命が少なくなっても仕方がない」という考えは間違っているし、脱パンデミックの経済学がそのように機能することはない。人々の健康を最優先に据えて重視する行動が経済再生への道を切り開くだろう。(チェルクパリ、フリーデン)
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迫り来るアナーキー
―― 米中対立と国際社会2020年6月号 ケビン・ラッド アジア・ソサエティ政策研究所・会長 元オーストラリア首相
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米経済の復活とコロナショック
―― 経済覇権の米中逆転はあり得ない2020年6月号 ルチール・シャルマ モルガン・スタンレー インベストメント・マネジメント 主席投資ストラテジスト
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脱パンデミックの経済学
―― 命を救うことで、生活とビジネスを救え2020年6月号 ラジーブ・チェルクパリ ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院 エコノミスト トム・フリーデン 米外交問題評議会 シニアフェローグローバルヘルス担当) 前米疾病対策センター所長(2009―2017)