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2020.5.12 Wed
<5月号ご紹介>
パンデミックと地球温暖化、石油の崩壊、エコノミストの節度と本懐
コロナウイルス危機はすでに世界の二酸化炭素排出量を大きく減少させている。だが、(感染症が終息し始め)工場や都市のシャットダウンが解除されていけば、各国政府は経済を成長させ、雇用を生み出し、苦境に陥っている産業を救済することを求める膨大な圧力にさらされる。この圧力が、「気候変動対策を進めていく」熱意を抑え込んでしまうかもしれない。今回の経験は、相手がウイルスであれ、気候変動であれ、大惨事が起きる前にレジリエンス強化のために投資しておくべきであることを物語っている。(ヒル)
パンデミックで世界経済のかなりの部分が停止状態に追い込まれている。石油(価格と需要の)危機は当面悪化し続け、その余波は石油産業を大きく超えた領域にも波及するだろう。需要減で原油価格が下がり、しかも各国の戦略備蓄が満杯になれば、世界の石油生産量はさらに激減する。備蓄と市場が飽和状態になれば、1バレル当たりの価格はゼロになる。これは、新型コロナがさまざまな国の経済を混乱に陥れた結果でもあるし、一部の国がとった地政学的決断の結果でもあるかもしれない。(ヤーギン)
20世紀のエコノミストたちは公共政策を方向づける洗練されたモデルを考案し続けた。その過程において多くの経済研究者は傲慢さを身につけてしまったかもしれない。有権者からの明確な意向がわからない議員、規制当局が「目の前にある規範的設問への経験的な答えをみつけた」と主張して不確実性を取り払ってくれるエコノミストに依存するようになったからだ。市民の信頼を再び勝ち取るには、自らの知識の限界を認識し、そのギャップを埋めるために他の領域の専門家、政治指導者、有権者の意見を尊重した19世紀のエコノミストの謙遜さを取り戻さなければならない。(ローマー)