2020.4.21 Tue
<2020年5月号より>
石油の崩壊
―― パンデミックと価格戦争が招いた悪夢
パンデミックで世界経済のかなりの部分が停止状態に追い込まれている。石油(価格と需要の)危機は当面悪化し続け、その余波は石油産業を大きく超えた領域にも波及するだろう。需要減で原油価格が下がり、しかも各国の戦略備蓄が満杯になれば、世界の石油生産量はさらに激減する。備蓄と市場が飽和状態になれば、1バレル当たりの価格はゼロになる。これは、新型コロナがさまざまな国の経済を混乱に陥れた結果でもあるし、一部の国がとった地政学的決断の結果でもあるかもしれない。(ヤーギン)
ウイルスの拡散を封じ込めようと奮闘するなか、欧米のリベラルな民主国家は、アウトブレイクを制限するための中国のやり方に注目し、権威主義的な手法の一部を採用すべきかどうかを考えている。パンデミックとの闘いにおいて強固なサーベイランス体制が不可欠であることを東アジア諸国はすでに立証しているのは事実だ。一方で、欧米の民主国家は、自国の市民を守るための「民主的サーベイランス」を確立しなければならない。今後数年間で、疫学とテクノロジー部門での世界的な混乱が重なり合い、グローバルな歴史が形作られることになるだろう。(ライト)
われわれが所属する非営利組織は「新型コロナウイルスがアジアでコウモリから人間へと感染を広げていく恐れがある」とかねて警告してきた。この60年にわたって、人獣共通感染症のほとんどの病原体は、農業、食糧生産、土地利用の変化によって、あるいは(野生動物取引市場などにおける)野生動物とヒトの接触によって発生してきた。これを抑え込むにはハイリスクの農業、食糧生産法をより安全なやり方へ移行させるために、土地利用に関する国内の法律・規制と国際的な法・ルールを強化し、調和させる必要がある。(マッカラバ、カレシュ )