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2020.12.30. Wed
<Agenda 2021>
コロナウイルスと国際政治
―― コロナウイルスが変えた世界Part 5
パンデミックの残骸のなかから、パックス・シニカが生まれたり、パックス・アメリカーナが再出現したりすることはあり得ない。むしろ、米中のパワーは国内においても対外的にも衰退していく。その結果、国際的アナーキーに向けた着実な漂流が続くだろう。秩序と協調の代わりに、様々な形態のナショナリズムが噴出する。米中対立が拡大するにつれて、多国間システムとそれを支えてきた規範や制度はすでに崩れ始めている。多くの多国間機関は、むしろ、米中のライバル関係の舞台と化しつつある。アメリカも中国もダメージを受け、しかもそこには、ジョセフ・ナイが言う、「国際システムを機能させるシステムマネージャー」はいない。間違った決断をし、配慮を怠れば、2020年代は1930年代へ回帰していく。(ラッド )
アメリカのリーダーシップの衰退、形骸化するグローバルレベルでの協調、対決的な大国間関係など、COVID19 が出現する前から存在する国際環境の特質は、パンデミックによって緩和されるどころか、先鋭化し、これらは今後の世界におけるより顕著な特質になっていくだろう。実際、パンデミックに対応する主体は国あるいは地方で、国際社会ではない。そして、危機が終息すれば、焦点は国の復興・再生へと移る。さらに悲観的にならざるを得ない理由の一つは、国際協調でグローバルな課題の多くに対処していくには、大国間の協力が不可欠であるにも関わらず、すでに長期にわたって米中関係が悪化していることだ。現状そして今後にとって、関連性の高い歴史的先例は、戦後に国際協調が進められた第二次世界大戦後ではなく、国際的な混乱が高まりつつも、アメリカが国際的な関与を控えた第一次世界大戦後の時代かもしれない。(ハース)
パンデミックを前に、各国は国際協調ではなく、他の諸国とも世界保健機関(WHO)とも対立するナショナリスト路線をとった。WHOに対する批判もあるだろう。しかし、多国間システムが「必要なときに自律的に動き出すメカニズムではない」ことを認識する必要がある。どんなに専門知識や経験があって、いかに機構改革を実施しても、(メンバー国が)システムにおける政治的な方向性を示し、持続的なリーダーシップを発揮しない限り、多国間組織は効果的に動けない。現在の危機を前に、各国の指導者が、多国間組織はうまく機能しないと結論づけ、その解体を求めるようになれば、新たに大惨事が引き起こされ、人類はさらに大きな犠牲を強いられるだろう。(パトリック)