2020.10.1.Fri
<10月号プレビュー>
ヨーロッパの地政学的覚醒 、バイデン政権の課題 、ラテンアメリカとパンデミックの悪夢
パンデミックは、数十年にわたる経済的、政治的な眠りからヨーロッパ大陸を覚醒させ、わずか6カ月前には想像もつかなかった形でEU統合プロジェクトを再活性化したようだ。トランプ政権によって乱用されてきた大西洋同盟に甘んじたり、対外的リーダーシップを攻撃的に行使するようになった中国に期待したりするのではなく、ヨーロッパの指導者たちは「自分に目を向けなければならないこと」を理解し始めている。いまや「戦略的自主路線」は、欧州の指導者たちが議論すべきテーマとしてよりも、むしろ、早急に成立させるべき政策とみなされている。大きな問題を内に抱えつつも、今回の危機を経て、ヨーロッパがより強く、より統合されたグローバルプレーヤーになることはほぼ間違いない。(バーグマン)
トランプを指導者に選んだ共和党は、力が正義を作るという信念をもっている。一方、民主党は正義が力を生むと考えている。米国内における欠陥や問題を是正する力や、移民を歓迎する民主国家としてのアイデンティティ、法の支配の順守、そして人間の尊厳に気を配る姿勢が、アメリカに世界のリーダーシップを主張する道徳的権威を与えているとみなしている。バイデンは、これを国内外で平常な感覚を取り戻すチャンスと説明している。その努力に、新しいタイプの世界秩序形成を加えるべきだろう。それは、ルールを押し付けることなくアメリカがリーダーシップを発揮し、他国に求める基準に自らも従い、グローバルな格差と闘う世界秩序だ。(ローズ)
ラテンアメリカにコロナウイルスを持ち込んだのは飛行機で世界を飛び回る富裕層たちで、最大の打撃を受けたのは貧困層だった。チリの場合、最初に感染したのはヨーロッパでの休暇から戻った首都サンティアゴのエリートたちで、彼らの家で働くメイドがウイルスを人口密度が高い貧困地区に持ち帰ってしまった。こうした階級格差はウイルスが国全体にばらまかれるきっかけをつくっただけでなく、一方的に大きな負担を貧困層に負わせた。格差や非正規労働者の多さそして政府の能力の低さがラテンアメリカにおけるパンデミック対応の足かせを作り出した。だが最大の問題は、各国のお粗末な政治的リーダーシップだった。(エンリケ、カバル、センテノ )
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ヨーロッパの地政学的覚醒
―― 危機を前に連帯を強めた欧州の自立2020年10月号 マックス・バーグマン センター・フォー・アメリカン・プログレス シニアフェロー
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バイデン政権の課題
―― 米外交の再生には何が必要か2020年10月号 ベン・ローズ オバマ政権大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
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ラテンアメリカとパンデミックの悪夢
―― ウイルスが暴き出した社会的病巣2020年10月号 ディアナ・エンリケ プリンストン大学社会学部博士候補 セバスチャン・ロハス・カバル プリンストン大学社会学部博士候補 ミゲル・A・センテノ プリンストン大学社会学教授 公共政策・国際関係大学院副学院長