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2019.9.4 Wed
中国ミサイル戦力の脅威
―― INF条約後の米アジア戦略
米ロが締結したINF条約は、これまでもワシントンのアジア戦略に対する拘束を作り出してきた。この間に、中国は世界有数の通常ミサイル戦力を整備し、(米ロ間では)生産が禁止されてきたタイプの地上配備型の射程500―5500キロのクルーズミサイル、弾道ミサイルを十分過ぎるほどに開発している。ワシントンはこれに対抗して「地上配備型ミサイルを基盤とする抑止」をアジアで構築すべきかもしれない。幸い、INF条約の死滅によって、有利な形へ軍事バランスをリセットするために必要とされていた機会を手にいれている。(エリクソン)
アメリカのINF条約からの離脱は「今後は中国との軍拡競争に専念する」と認めたようなものだ。中国に対処する上では、中距離ミサイルを配備するだけでは不十分で、通常戦力への投資拡大や太平洋における海軍力の確立に再びコミットしなければならない。30年以上前に放棄した中距離ミサイルシステムに依存するのではなく、アメリカ政府はもっとまともな戦略計画をまとめる必要がある。(ニコルス)
軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。これらが重なり合うことで、厄介で不可避の結論に行き着く。それは、抑止が形骸化しているということだ。(クレピネビッチ)