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2019.9.26 Thu
<10月号プレビュー>
永続化するか、イスラエルとアラブの雪解け
―― そのポテンシャルと限界
イランを共通の脅威とみなすイスラエルと湾岸諸国の関係はかつてなく良好な状態にある。イスラエルの国防担当高官は、「イランとの戦いをめぐって、イスラエルがサウジと情報共有をすることもできる」とさえ述べている。リヤドもイスラエルとの関係正常化に前向きのようだ。しかし、アラブ大衆のイスラエルへのイメージは大きく変化しているわけではなく、王室内にも伝統的路線にこだわる勢力もいる。・・・(クザンスキー、シャピロ )
イランに対するアラブ諸国の懸念が、曖昧で決め手に欠ける和平プロセス以上に、中東におけるイスラエルとの存在を正常化する作用をし始めている。この流れが続けば、かつては紛争の中枢にあったイスラエルが地域的安定の柱とみなされるようになる可能性もある。(クレーマー)
アラブ国家の外交政策は、脅威と機会のバランスをどう捉えるかに左右されている。国内での民衆蜂起、イランパワーの拡大、アメリカの中東からのディスエンゲージメント(で引き起こされる事態)に対する「恐れ」をもつ一方で、弱体化した国と国際的な混乱につけ込みたいという各国の「野望」が、破壊的な紛争への関与へと走らせ、地域全体をカオスに巻き込みかねない状況にある。現状では、機能するパワーバランスを形作ろうとする、いかなるビジョンも幻想に過ぎない。新しい秩序とは、基本的に混乱と無秩序に他ならない。(リンチ)