Focal Points

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2019.8.29 Thu

<9月号プレビュー>
暗号通貨と国際通貨システムの未来
――リブラのポテンシャルとリスク

今も昔も、国境を越えて資金を移動させるのは容易ではない。これを魔法のように解決してくれるのが、ブロックチェーンを基盤とするフェイスブックの暗号通貨・リブラだ。暗号通貨なら、ユーザーは、メッセージやビデオを送るのと同じスピードで送金できるし、銀行へのアクセスをもたない人にも恩恵をもたらせる。但し、この構想が実現すれば、既存の金融機関は追い込まれ、資金洗浄やテロ資金に悪用されるリスクもある。驚異的な利便性の一方で、富の移転を規制し、監視する立場にある政府にとっては非常に厄介な事態が作り出される。(ワーバック)

仮想通貨はそのほとんどが投機の対象、技術オタクのオモチャ、あるいは、マネーロンダリングの手段として使われてきた。しかし、(分散型ネットワークの)ブロックチェーンは違う。すでに一部の企業や団体は、契約を電子化したり、金融取引で中間業者をスキップしたり、台帳を監査しやすくしたりするためにブロックチェーンを使用している。これが広く使われるようになれば、グローバル経済の取引に派生する摩擦が少なくなる。特に輸出入業者は、その多くが決済ツールの不足に悩んでおり、ブロックチェーンでこれを代替すれば大きな恩恵を確保できるだろう。(リャオ)

米欧経済がともに深刻な危機に直面しているために、ドルとユーロへの信任が揺らぎ始め、国際通貨システムそのものが動揺し始めている。金、小国の通貨、人民元、SDRと、現状におけるドルやユーロの代替策はどれも問題があり、結局、現在の国際取引を支えられるのはドルとユーロだけだ。しかし、この二つの通貨の安定に対する懸念がさらに高まり、各国の中央銀行が保有するドルとユーロを手放していけばどうなるだろうか。1930年代、1970年代、われわれは今後どちらのシナリオを目にすることになるのか。グローバル経済の運命は生死の縁をさまよっている。(エイケングリーン)

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