2019.12.10 Tue
<12月号本日発売>
サバイバル移民とラテンアメリカの悪夢、経済停滞が引きずり出した民衆の怒り、失われた株式市場のバランス
2015年にヨーロッパが経験し、現在ラテンアメリカで起きている危機は、政治難民や経済難民の流出によるものではない。人々は「生き残るための移住(survival migration)」を試みている。国が破綻したか脆弱なために、生活が耐え難いものになってきたがゆえに彼らは母国を後にしている。統治の破綻、社会暴力、経済的窮乏などが大きな理由なのだ。これまでの難民や移民の定義を見直して、これまで難民にしか与えられなかった支援の一部を、「サバイバル移民」にも提供できるようにしなければならない。(ベッツ)
21世紀初頭の原材料バブルがはじけて以降、ラテンアメリは長期に及ぶ停滞のなかにある。賃金が停滞し、生活コストが高騰するなか、格差や政治腐敗が作り出す問題に民衆が耐えるのはもはや限界に達していた。アジェンダを絞り込んで積極的対策をとる必要がある。消極的姿勢では、低成長、民主主義への信頼の失墜、ポピュリストの台頭という悪循環をさらに大きくするだけだ。(ナイーム 、ウィンター )
株式市場は「権力関係によって支配される政治的制度」であり、その構造とルールを好ましいとみなすかどうかは、プレイヤー毎に違う。しかし、金融機関が並外れた強大な権力と影響力をもっていれば、市場構造は彼らの有利なものへと歪められる。その最たるものが超高速取引(HFT)だろう。実質的な監督が絶対的に不足している。不正行為が実際に行われていることは誰の目にも明らかだ。(サルモン )