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2019.10.15 Tue
米軍撤退とシリアの現実
―― シリア内戦と外部パワー
2018年12月、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を命じるという驚くべき決定を下し、アメリカのシリア戦略を根底から覆した。バッシャール・アサドが退陣することも、イランがシリアからいなくなることもあり得ないし、トルコは厄介なプレイヤーのままだろう。一方で現在のシリアにおける主要なパワーブローカーがロシアであることをワシントンは認識しなければならない。(マクガーク)
シリア紛争とイスラム国勢力が作り出した混乱と騒乱のなかで国境を越えた連帯を形成したクルド人は、いまやイラク、トルコ、シリアで明確な政治的プレゼンスを確立し、ヨーロッパでも力強いディアスポラ・コミュニティが誕生している。これらの流れが重なり合うことで、汎クルドのアイデンティティが強化されている。単一の独立したクルディスタンが存在しなくても、クルド人の覚醒が始まっている。・・・(バーキー)
シリア内戦に介入している外部パワーは、この内戦をゼロサム・ゲームとみなしている。さらに、戦略的な頑迷さを崩さない理由を敵対勢力の行動のせいだと相手に押しつけ、シリア人を利用して自分たちの国益のために戦わせ、その結果シリア人が命を落としている。しかし、有志連合を主導するアメリカも、シリアの現実に真剣に向き合って活動していないし、内戦を終わらせるには不可欠の譲歩を真剣に検討していない。本気で流れを変えない限り、シリア内戦は今後も続き、さらに多くの人の命が奪われることになる。(ステイン)