Photo / U.S. Department of Defense
2018.9.7 Fri
東アジアの安全保障環境を考える
―― 日本の防衛戦略と中台関係
ポスト冷戦初期の安全保障環境なら、前方防衛戦略にも完全な合理性があったが、中国が紛争の初期段階でかなりの優位を手にできる現在の環境ではうまく機能しないだろう。脆弱性を抑え、アメリカとの同盟関係のポテンシャルを最大限に生かし、中国に対する抑止力を強化するには、日本はむしろ「積極的拒否戦略(strategy of active denial)」へシフトしていくべきだろう。これは、紛争が始まった段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、敵の攻撃を耐え抜き、相手を悩ませ、抵抗することで、短期間で決定的な勝利を相手に与えず、攻撃のリスクとコストを高めるような戦力を前提とする戦略だ。(ヘジンボサム、サミュエルズ)
習近平は、自らが示した今後の中国のビジョン「中国の夢」において統一をより重要な要素として位置づけたにも関わらず、台湾での統一への支持率が急落していることを懸念している。実際、最近の蔡英文による「北京による非常に大きな圧力」に関する一連の発言は、欧米の専門家たちが気づいていない点を彼女が憂慮していることを意味する。それは「台北と北京の関係が急速に不安定化し、台湾海峡危機のリスクが高まっていること」に他ならない。(マッザ)
台湾旅行法が成立し、トランプ政権の高官の入れ替えが続いている以上、いずれトランプが、中国との軍事衝突を引き起こしかねないやり方で台湾カードを切る可能性は現に存在する。
トランプがアメリカと台湾の関係を大幅に格上げすれば、この動きは台湾では大いに歓迎されるだろう。しかし、蔡はそのような変化を受け入れる誘惑に耐えた方が賢明だ。誘惑に負ければ、台湾は「ワシントンの中国対抗策における人質(手駒)」にされてしまうことを認識すべきだろう。(ダニエル・リンチ)