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2018.9.25 Tue
新アラブ秩序を規定する恐れと野望
―― 安全保障のジレンマに支配された中東
アラブ国家の外交政策は、脅威と機会のバランスをどう捉えるかに左右されている。国内での民衆蜂起、イランパワーの拡大、アメリカの中東からのディスエンゲージメント(で引き起こされる事態)に対する「恐れ」をもつ一方で、弱体化した国と国際的な混乱につけ込みたいという各国の「野望」が、破壊的な紛争への関与へと走らせ、地域全体をカオスに巻き込みかねない状況にある。現状では、機能するパワーバランスを形作ろうとする、いかなるビジョンも幻想に過ぎない。新しい秩序とは、基本的に混乱と無秩序に他ならない。(リンチ)
ナイル川のダム問題で表面化している課題は他の文脈でも具体化していくはずだ。第1に、アラブとアフリカのつながりの重要性が高まっている。莫大な富をもちながら不安定な食糧供給に悩む湾岸諸国が(アフリカとの関係を模索することで)流れを主導している。問題は、アラブとアフリカの関係が深まるかどうかではなく、関係が建設的に深化していくかどうかであり、紅海の対岸で続いているイエメン紛争が終結した場合に、アラブ諸国のアフリカ北東部へのエンゲージメントがどのように変化していくかを考える必要がある。(ハンナ、ベナイム)
冷戦終結から9・11までは、大半の内戦が交渉によって終結したが、その後、再び国際環境が変化し、内戦の規範も変化した。テロリストとの交渉は選択肢とされず、テロ組織の粉砕が目標とされ、欧米諸国も民主化よりも安定を重視するようになった。紛争当事国政府は、全面的勝利を目指す戦略を正当化し、外部パワーからの支援を確保するために、反政府勢力にテロリストの烙印を押し、しかも外部パワーがそれぞれ対立する勢力を支援するようになった。これが、内戦が長期化している大きな要因である。シリア内戦はこのような現在の内戦のトレンドを最も顕著に表す一例である。(ハワード 、スターク )