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2018.8.6 Mon

教育と国家を考える
―― 人的資本投資がなぜ必要か

研究によれば、学校教育を1年多く受けると、平均して約10%収入が増加する。教育の質も関係してくる。例えば、アメリカでは、小学校のクラス担任を質の低い教員から平均的教員に替えると、その教室の生徒たちの生涯収入の合計は25万ドル増加する。さらに、人的資本への投資は信頼も増大させる。教育レベルが高くなると、他者をより信用するようになる。信用が機能する社会ではより高い経済成長が期待できる。さらに、人々はより寛容になる。20世紀半ばにヨーロッパ各地で行われた一連の義務教育改革によって、それまでよりも多くの人が移民に対して寛容になったとする研究もある。(キム)

多くの側面からみて教育は安全保障にとっても重要だ。一つは、われわれが一つの国家でないとすれば、国を守ることもできない。われわれは世界に赴いて市場経済と自由な空間を広げ、リーダーシップを発揮してきたが、われわれが教育を通じて国を一つにし、自信を持たなければ、そうした過去の実績を今後も積み重ねていけると楽観することはできない。テクニカルな側面もある。われわれが雇用を創出し、21世紀の世界を主導できるような、競争力と情報面での優位を維持していくには科学、数学、工学、そして基本的読解力に関する教育を十分に与えなければならないが、この条件が満たされていない。(クライン、ライス)

日本の教育システムについては、無数の問題が指摘されてきたが、その最大のものは大学入試かもしれない。大学の入試試験は、若者の人生を決める1回のテストで、毎年約50万人の高校生が受験している。その出来が、名声によってランクづけされた大学に入学できるかどうかを決める。しかし企業の採用担当者から見れば、大学は人材を供給してくれる存在にすぎない。彼らは学生が大学で何をしたかよりも、大学名に注目する。成績さえ無意味とみなされる。だから学生は勉強しようという気にならないし、教員は教えようという気にならない。その結果、大学は学生にとって「レジャーランド」になっている。(スチュワート)

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