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2018.7.3 Tue
ゲノム編集と合成生物学
―― クリスパーと合成ゲノミクスのポテンシャルとリスク
疾患を引き起こす遺伝子上の変異を修正し、生物種に有益な形質(遺伝上の特性や性質)を新たに与えることができれば、どうだろうか。いまや、それを可能にするツール(クリスパー)をわれわれは手にしている。好ましい形質を得るために、それが何によって左右されているのかのDNAコードさえ知らずに、何世代もかけて試行錯誤を重ねて品種改良するのではなく、特定のDNA情報を改変するだけで、鼻を大きくし、病原菌への耐性を与え、(作物の)栄養価を高くするなど、思いのままだ。医学から農業までのあらゆる分野で、近代生物学の応用の仕方が変わりつつある。(ダウドナ)
今後10年間でゲノム編集のテクノロジーが、グローバルな医療と開発領域で人類がこれまでなかなか解決できなかった重要な課題を克服するのを助けてくれるだろう。このテクノロジーによって、科学者たちは、貧困層を中心とする数百万人に障害を与え、命を奪っている疾患と闘うための、より優れた診断、治療法を発見しつつある。さらに、貧困を終わらせるための研究を加速し、例えば、途上国の何百万もの農民が栄養価も高く、丈夫な作物や家畜を育てられるようになる。(ゲイツ)
科学者たちが「人間が形作る進化(human-directed evolution)」や、穏やかな細菌に疾病を引き起こす危険な特性を与える実験のメリットについて議論を始めているというのに、グローバルなバイオテロやバイオセキュリティを担当する官僚たちは、この流れについていけずにいる。彼らは、依然として、どのような脅威が重要で、どうすれば、それにうまく対処できるかに関する時代遅れの概念にとらわれている。(ギャレット)