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2018.7.17 Tue
ポストアメリカの世界経済
―― リーダーなき秩序の混乱は何を引き起こすか
「アメリカファースト」の貿易政策が、製造業に新たな雇用をもたらすことも、貿易赤字を縮小することもあり得ない。むしろ、あらゆる国がダメージを受ける貿易戦争を世界レベルで引きおこす危険がある。保護貿易への傾斜は世界貿易機関(WTO)を中心とする、長年アメリカが支え、世界の平和と繁栄に貢献してきた自由貿易体制を傷つけることになる。(アーウィン)
ワシントンがこれまでの経済的リーダーシップから離れていけば、世界だけでなく、アメリカも大きなダメージを負うことになる。トランプ政権が全面的な貿易戦争の道に踏み込まない限り、その帰結が直ちに現れることはない。しかし、アメリカが経済秩序から今後も遠ざかったままであれば、経済成長は鈍化し、世界経済の先行きは不透明化する。その結果生じる混乱によって、世界の人々の経済的繁栄は、これまでと比べ、政治略奪や紛争に翻弄されることになるだろう。(ポーゼン)
巨額の経常赤字、銀行システムの混乱、外交の混乱によって弱体化したアメリカには、もはや単独でグローバル経済のリーダーシップを担う力はない。一方で、その役割を新たに引き受ける国も登場していない。中国は十分な金融資産に裏打ちされたグローバルな投資国・支援国としての役目を果たせる力を持っており、実際、問題に直面していたヨーロッパ諸国に資金を提供し始めている。しかし、輸入よりも輸出を重視する重商主義的な貿易アプローチをとっている限り、中国が困難な状況にある諸国からの輸出を受け入れる開放的市場の役目を果たすことはない。(アハメッド)