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2018.6.20 Wed
薬剤耐性という大いなる脅威
―― 医療の現場で何が起きているか
複数あるいは全ての薬剤への耐性を持つ菌株である「スーパーバグ」を封じ込めなければ、世界は「ポスト抗生物質時代」に向かい、2050年までに最大で1000万人が死亡する危険があると指摘している。抗生物質やその他の抗菌剤に対する耐性は、世界経済にも重大な損害をもたらしかねない。世界銀行は、抗菌薬耐性菌を原因とする疾患によって2030年までに毎年1兆ドルから3兆ドル相当の経済生産のロスが生じると試算し、特に貧しい国にその悪影響が集中する恐れがあると指摘している。(フェルター )
オピオイドは慢性的な痛みを抑えるために長期的に処方されると、問題を引きおこす。依存リスクを高めるとともに、耐性が形成されるために、初期と同じ効果を求めて服用量が増える。オピオイドが非常に危険なのは、致死量と通常の摂取量の間に僅かな違いしかないことだ。2000―16年にオピオイドの過剰摂取によって死亡したアメリカ人の数は、第一次世界大戦と第二次世界大戦のアメリカ人犠牲者の合計を上回っている。(ハンフリーズ、コールキンス、ブラウン)
食肉に対する貪欲な国際需要により、畜産業者は養豚場、養鶏場、牧場の限られたスペースに可能な限り多くの家畜を詰め込むようになった。近代的な家畜生産方法は食肉生産量を最大化するが、家畜たちは必要以上の感染のリスクにさらされる。詰め込まれた囲いの中で感染は瞬く間に広がる。そして、抗生物質の使用による耐性菌の増大は、感染症との戦いをさらに困難なものにする。現在多くの家畜農場では、抗生物質をえさに混ぜて家畜に定期的に与えて感染を防いでいる。だが、このような抗生物質の乱用は、危険な薬剤耐性を持った強力な病原体の出現を助長し、動物と人間のどちらにとっても危険な状況をつくり出す。(カレシュ、クック)
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CFR Backgrounder
薬剤耐性という大いなる脅威
―― 医療の現場で何が起きているか2018年6月号 クレア・フェルター www.cfr.orgのライター
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グローバル化するオピオイドの脅威
――― 危険な薬剤のグローバル化がなぜ起きているか2018年6月号 キース・ハンフリーズ スタンフォード大学教授(精神医学)、ジョナサン・P・コールキンス カーネギーメロン大学教授(公共政策)、バンダ・フェルバブ=ブラウン ブルッキングズ研究所シニアフェロー
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人畜共通感染症の脅威
――鳥インフルエンザからBSE、エボラ出血熱まで2005年12月号 ウイリアム・B・カレシュ 野生動物保護学会獣医学プログラム ディレクター、ロバート・A・クック 野生動物保護学会副会長