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2018.5.11 Fri
「北朝鮮の非核化」とは何か
―― パーセプションとリアリティ
「制裁と軍事的恫喝を前にすれば、金正恩は、核開発プログラムはむしろ体制の崩壊につながると認識するようになる」とワシントンは期待するかもしれないが、一方で平壌は「トランプが大きな譲歩を求めることなく、首脳会談に前向きになったのは、アメリカもついに北朝鮮を核保有国として受け入れる準備をしているのではないか」と考えているかもしれない。認識上のギャップが交渉で明らかになれば、米朝関係にすでに埋め込まれているイメージ上の間違い(ミスパーセプション)によって、ともに望んでいない壊滅的事態が引き起こされる恐れがある。(ジャービス、フーパー)
平壌が韓国の外交チームにオファーした核・ミサイル実験の凍結はたんに現状を固定するだけの話で、(アメリカを)交渉に応じさせるための誘因にすぎない。交渉が終わった翌日から平壌は実験を再開できるし、その一方で核開発プログラムを交渉中も水面下で進めるだろう。最後に、北朝鮮が核保有国として認知を取り付け、韓国から米軍を締め出し、韓国へのアメリカの軍事コミットメントを形骸化させるという長期的な目的を見直したと信じる理由はない。・・・こうした交渉上の罠に対抗するには、トランプは、北朝鮮の核兵器およびICBMの開発プログラムの凍結と最終的な解体に向けて、エネルギー供給、経済援助、そして制裁の緩和措置を段階的に小出しにしていく必要がある。(チャ 、カッツ)
金正恩体制が意味のある時間枠のなかで非核化に応じることはほぼあり得ない。彼は「国の存亡に関わる」核抑止力を放棄することは自殺行為だと考えており、現状では完全な非核化は実質的に交渉テーブルには載せられていないと考えるべきだ。トランプ政権は、歴代政権のいずれも北朝鮮が現在のような核保有国になるのを阻止できなかったことを認識しなければならない。今後短期間で完全な非核化を実現するのが不可能である以上、もっとも懸念される領域の開発を即座に停止させた上で、包括的かつ検証可能な制約を課すという方法が、北朝鮮との取引を交渉する上でもっとも現実的な選択肢だろう。(ダルトン、レバイト)
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―― 外交で脅威を粉砕するには2018年5月号 ビクター・チャ 元米国家安全保障会議アジア部長 カトリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議 ディレクター(日韓担当)
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―― 北朝鮮は非核化には応じない2018年5月号 トビー・ダルトン カーネギー国際平和財団 核政策プログラム共同ディレクター アリエル・レバイト カーネギー国際平和財団 シニアフェロー