2018.10.12 Fri
<2018年10月号レビュー>
イラン制裁が同盟関係を揺るがす、米欧関係に生じた大きな亀裂、ほか
イランに対するトランプの強硬なアプローチは、経済制裁を求めるアメリカの圧力から自国の企業をどのようにして守るかについて、欧州連合(EU)内、そして世界での長期的議論を喚起することになるかもしれない。すでにヨーロッパは具体的な動きをみせている。北朝鮮の核の脅威や中国の強硬路線に対処していくためにアメリカの支援を必要とする日本と韓国は、イラン制裁への参加を回避したいと望みつつも、トランプとの間で大きな対立を抱え込むことを望んでいない。イラン制裁が実現しても、その後、ワシントンは同盟関係の修復に取り組まざるを得なくなるだろう。(ハレル)
アメリカの金融システムは、もはや公共財ではなく、ワシントンが他国を従わせるために一方的に振り回す地政学的ツールにされていると各国が考えるようになれば、それに翻弄されるのを防ぐ措置をとるようになる。既に、ヨーロッパはアメリカの金融覇権に挑戦することを決断している。外交領域も例外ではない。ドイツ外相は「既存のルールを守り、必要な場合には新ルールを導入し、各国の目の前で国際法が踏みにじられる事態に対しては連帯を示す有志同盟」の形成を明確にイメージし、既にカナダや日本に接触している。(ベナー)
グランド・エチオピア・ルネサンス・ダムは多層的な課題を抱えている。ダムが完成すればエチオピアは近隣諸国に相当規模の電力を輸出できる電力生産ができるようになる。隣国スーダンも、ダムが自国の農業に恩恵をもたらすことを期待している。一方、水資源に乏しいエジプトは、上流でのダム稼働によって深刻な事態に直面する恐れがある。・・・このハイブリッド化した多層的な課題に取り組んでいくには、縦割りの官僚組織に囚われず、問題を横断的に捉える必要がある。地域問題、政治・軍事問題の専門家だけでなく、水文学や工学の専門家の知識も動員しなければならない。(ハンナ、ベナイム)