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2017.3.23 Thu
専門的見解に対する不信と反発
―― 根拠無き意見への追随が民主主義を脅かす
専門知識をもたない市民は専門家なしでは事をなし得ないのだから、エリートへの憎しみを捨ててこの現実を受け入れる必要がある。専門家も市民の声を相手にしないのではなく、自分たちのアドバイスが常に取り入れられるとは限らないことを受け入れなければならない。現状では、システムを一つに束ねてきた専門家と市民の絆が危険なまでに揺るがされている。ある種の信頼と相互尊重を取り戻さない限り、世論における議論は、根拠なき意見への追随によって汚染されてしまう。そのような環境では、民主主義の終わりを含む、あらゆるものが現実となっても不思議はない。(ニコルス)
(国や民族に囚われない)コスモポリタン的感情をもつアメリカ人の多くは、道義的、倫理的にみて、人類全般の生活の改善に取り組むことが重要だと考えていた。一方、ジャクソニアンはコスモポリタン・エリートのことを、「アメリカやその市民を第1に考えることを道徳的に疑問視する、国に反逆的な連中」とみている。ジャクソニアンがアメリカのグローバル関与路線を敵視しているのは特定の代替策を望んでいるからではない。むしろ、外交エリートに不信感をもっているからだ。そして彼らは、「トランプは間違いなく自分たちの側にある」と考えている。(ミード)
「他者」を特定することで、誰が仲間で、誰がそうでないかを区別する心理的ルールが育まれ、これによって国も社会も集団も連帯する。一方で、そうした他者がいなくなれば連帯は分裂し始める。例えば、ソビエトという他者が崩壊して脅威でなくなると、アメリカの政党は「内なる他者」に目を向けるようになった。共和党が毛嫌いする対象は「共産主義者」から「ワシントンのエリート」に置き換えられた。民主党は(性差、人種、民族、性的指向、障害などのアイデンティティを擁護する)「アイデンティティ政治を善か悪かの道徳的バトル」と位置づけた。そして、両党の他者化トレンドを自分の優位に結びつけたのがドナルド・トランプだった。(コルガン)