Evan El-Amin/shutterstock.com
2017.2.03 Fri
グローバリズム・イデオロギーの終焉
―― 米中は何処へ向かうのか
世界をグローバルスタンダードで統一しようとする「グローバリズム」のビジョンは、アメリカの中間層の多くにダメージを与えた。冷戦の勝利からわずか一世代のうちにアメリカの工業基盤は空洞化し、インフラは荒廃し、教育制度は崩壊し、社会契約は引き裂かれた。トランプ大統領の誕生は偶然ではない。これは、エリートたちが長期にわたって無視してきた米社会内部の構造的な変化が蓄積されてきたことの帰結に他ならない。(リ)
リベラルな国際秩序およびそれを支えるさまざまな原則の存続がいまや疑問視されている。中国やロシアなどの不満を募らす国家は「現在の国際システムは公正さに欠ける」とみているし、世界中の人々が、現秩序が支えてきたグローバル化が伴ったコストに怒りを募らせている。大統領に就任するトランプがアメリカの世界における役割についてどのようなビジョンをもっているのか、正確にはわからないが、少なくとも、現在のようなリベラルな秩序は想定していないようだ。(マザー)
世界でもっとも急速に成長している国々を取り込まなければ、国際システムは機能しない。中国やインドといった新興国をきちんと仲間に入れなければ、これらの国はよそに目を向けるだけだ。逆に言えば、今後ほとんどの国際機関で、新興国の発言力が強化されるにつれて、自由主義的な価値をもつヨーロッパ諸国の発言力は低下していく。但し、中国に現在の国際システムを全面的に覆すつもりはない。むしろ、現在のシステムの不備を補完しようと試みている。(ファイゲンバーム)