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2017.10.10 Tue
キケロ兄弟の選挙戦術
―― そして今も同じ、政治風景
候補者となった以上、あなたに好意をみせる人、あなたの仲間になりたいと考える人はすべて友人です。一方、家族そしていつもあなたの近くにいる人々には注意が必要です。悪い噂の大元は家族や友人たちであることが多いものです。・・・毎日、人々の顔と名前を一致させることを練習すべきです。そして決してローマを離れてはいけません。・・・キャンペーンでもっとも大切なのは、人々に希望を与え、あなたに好感を抱かせることです。有権者に強い印象を与えるには、彼らのことを理解し、愛想良く優しく接し、自分をアピールし、誰とでも会い、決して諦めないことです。(キケロ)
紀元前64年にローマの執政官に出馬した実兄のマルクス・キケロのためにクィントゥス・キケロがまとめた選挙戦略メモ「選挙に関する小ハンドブック」の選挙指南は見事という他ない。この文章は、(君主論をまとめた)イタリアの作家で政治思想家のニッコロ・マキャヴェリがまとめた作品同様に、政治の過酷な現実を赤裸々に描いている。クィントゥスは、選挙に勝つために何が必要かについて、われわれキャンペーンアドバイザーが「信頼構築」と呼ぶやり方から始め、その後、候補者の支持基盤の本質と強さを分析し、特定グループをターゲットにする必要性を指南し、階級闘争とみられるのを避けるようにアドバイスしている。・・・(カービル)
古代ローマの歴史には近代政治の教訓とできるエピソードが数多くある。移民問題、予防攻撃、ポリティカル・コレクトネス、宗教集団への対応、マイノリティの扱いなどだ。紀元前146年にローマがカルタゴ相手に最終的に勝利を収めて以降の歴史は、新たな一極世界における覇権が伴う問題が何であるかもわれわれに教えている。その後、ローマでは対外的な敵の消失によって、内的な権力抗争が展開されるようになり、小さな脅威でさえも帝国の存続を脅かす脅威とみなされるようになった。・・・(フォンテーヌ )