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2017.1.30 Mon
2017年をとらえるもう一つの国際政治潮流
――リベラリズムを脅かす「他者化」メカニズム、民主的安定の終わり(2月号プレビュー)
ソ連なきあと、共和党は、「ワシントンのエリート」を他者として区別するようになった。一方で民主党は、(性差、人種、民族、性的指向、障害などのアイデンティティを擁護する)アイデンティティ政治を「善か悪かの道徳的バトル」と位置づけた。そして、両党の、一部の人を他者として区別するトレンドを自分の優位に結びつけたのがドナルド・トランプだった。問題は、多くの人が他者を区別する心理がどの程度リベラリズムやグローバル化の脅威となるかを認識していないことだ。(コルガン)
われわれは新しい時代へのシフト、つまり、この半世紀にわたってわれわれが当然視するようになった民主的安定という、かつてない時代の終わりの始まりを目の当たりにしているのかもしれない。これまでと違うのはプーチンの「非自由主義的な民主主義モデル」という民主主義に対する代替モデルが生まれていることだ。しかも、トランプ大統領の誕生で、この半世紀で初めて、世界でもっともパワフルな国が、リベラルな民主的価値の促進や世界のリベラルな民主国家を脅威から守ることにコミットしなくなる恐れがある。(モンク)
ヨーロッパ・プロジェクトの設計者たちは、単一市場、共通通貨の導入、アイデンティティの共有がメンバー国の国家主権をトップダウンで弱めていけると考えていたが、経済統合プロセスが、地域的なアイデンティティをかつてない形で刺激するようになるとは予想もしていなかった。このメカニズムによって、「ヨーロッパが統合を深めれば深めるほど、より多くのメンバー国が分裂しかねない」状況にある。統合やグローバル化から恩恵を手にできる国内地域とそうでない地域の格差を広げ、緊張をさらに高めてしまうからだ。(カンパネッラ)