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2016.10.11 Tue
なぜプーチンは米大統領選挙に
干渉したか
―― トランプ支援と
ロシアの国内政治
ドナルド・トランプが(「自分はロシアのプーチン大統領を尊敬している」と語ったことで)、プーチンが見逃すはずもない絶好のチャンスが作り出された。互いに相手を気に入っている2人は、「アメリカの政治エスタブリッシュメントを切り崩したい」と考えている点でも立場を共有している。ロシアが外国をターゲットにしたサイバー攻撃を政治的武器として使い始めたのは少なくも10年ほど前からだが、大統領選挙のさなかに特定の大統領候補を支援しようとアメリカにサイバー攻撃を試みたのは、今回が初めてだ。(フェイファー)
ロシアによるグルジアとウクライナでの戦争、そしてクリミアの編入は、「ポスト冷戦ヨーロッパの安全保障構造から自国が締め出されている現状」に対するモスクワなりの答えだった。一方、シリア紛争への介入は「中東におけるロシアの影響力を再生する」というより大きな目的を見据えた行動だった。シリアに介入したことで、ロシアはポスト・アサドのシリアでも影響力を行使できるだけでなく、地域プレイヤーたちに「アメリカとは違って、ロシアは民衆蜂起から中東の指導者と政府を守り、反政府勢力が権力を奪取しようとしても、政府を見捨てることはない」というメッセージを送ったことになる。(ステント)
2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。(ソバーン)