中台関係の新たな緊張
―― 北京が強硬策をとる理由
2018年9月号
この20年間の中台関係の歴史からみても、「交渉による統一」が実質的なカードではないことは明らかだ。それでも、習近平は、台湾に焦点を合わせる路線から遠ざかるのではなく、「中国の夢」の重要な一部に統一を据え、「中華民族の偉大なる復興」のためには、あらゆる中国人に繁栄をもたらすだけでなく、台湾の公的な統一が必要になると主張している。しかし、「偉大なる復興」に必要とされる経済成長は停滞期に入りつつあるのかもしれない。実際「力強い市場志向の改革なしでは、中国の経済成長は2010年代末までに終わる」と予測する専門家もいる。あらゆる中国人に繁栄をもたらせないとすれば、習近平は海峡間関係の緊張をむしろ歓迎するかもしれない。台湾海峡の風は強く、波は高い。