市民的自由なき民主主義の台頭
1998年1月号
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いまや尊重に値するような民主主義に代わる選択肢は存在しない。民主主義は近代性の流行りの装いであり、二十一世紀における統治上の問題は民主主義内部の問題になる公算が高い。目下、台頭しつつある市民的な自由、つまり人権や法治主義を尊重しない非自由主義的な民主主義が勢いをもつようになれば、自由主義的民主主義の信頼性を淘汰し、民主的な統治の将来に暗雲をなげかけることになるだろう。選挙を実施すること自体が重要なのではない。選挙を経て選出された政府が法を守り、市民的自由を尊重するかどうか、市民が幸福に暮らせるかどうかが重要なのだ。行く手には、立憲自由主義を復活させるという知的作業が待ちかまえていることを忘れてはならない。もし民主主義が自由と法律を保護できないのであれば、民主主義自体はほんの慰めにすぎないのだから。