外交官なき外交の時代
1997年12月
政治権力の分散化、利益の多様化は、外交組織にも大きな衝撃を与えている。いまや、国務省を迂回して国際交渉がなされることも珍しくなく、かつては国務省の人間とわずかばかりの武官だけがいた海外の大使館でも、国務省の職員や外交官はむしろ少数派である。さらに、州や利益団体までもが海外にオフィスをもち、多国間交渉の場には、相手国の立場や意向すらわきまえていない国務省とは無関係の代理人が送り込まれることも多い。だが、これは急速に変貌する社会や経済の反映であり、むしろ問題は、国家を代弁するのとは異なる次元で活動する多種多様な単位が登場したり、本来国家とは呼びえない資質しかもたない政治単位が国家として対外的に活動していることだ。この外交の混乱をうまく整理し、それぞれに適切な役回りを与えるルールを確立させることこそ急務であろう。