コソボ危機が変える米欧関係の今後
1999年7月号
コソボ問題を契機に、ヨーロッパ、アメリカの双方とも、お互いの存在なしにはヨーロッパでの重要な目標を実現するのは不可能だということを再認識したようだ。しかし、もしコソボで失敗すれば、ヨーロッパ各国の指導者は、「嫌いなアメリカ」に依存しつつも意に沿わない結果に甘んじたという国内での批判にさらされるだろう。事実、アメリカとの協力体制が、ヨーロッパ各国の極左政治勢力からの非難にさらされたため、各国の指導者は「人道的見地」からのNATOの結束を強く訴えてきた。だが、ミロシェビッチとのあいまいな妥協によってコソボ危機に終止符が打たれるとすれば、人道主義を訴えてきただけにヨーロッパ人の幻滅感は強く、政治的な余波も大きいだろう。その場合、ヨーロッパの国内政治力学とアメリカの覇権に対する反発を欧州の指導者たちは抑えこめるだろうか。コソボが問いかけているのは、たんに人道主義介入の是非と課題だけでなく、NATOを中心とするアメリカとヨーロッパの関係そのものなのだ。