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テーマに関する論文

ヨーロッパの独自防衛は実現するか

2000年9月号

フィリップ・H・ゴードン  ブルッキングス研究所 米仏センター長

ヨーロッパ諸国はコソボ紛争の顛末から、自分たちが軍事的にいかにアメリカに依存しているかを思い知り、大きな変革なしには状況を変化させられないことを認識した。EUによる自立的防衛力を整備すれば、アメリカはヨーロッパにおける重荷を軽減できるし、ヨーロッパはより高い能力を持つパートナーになれる。しかし今回の構想が、ヨーロッパの軍事力の不備を補うような軍事能力の向上ではなく、たんなる官僚制の強化につながり、NATOとの関係を複雑にしてしまうだけなら、ヨーロッパが全般的にいい方向に向かうとは思えない。

本土ミサイル防衛というアメリカの過ち

2000年9月号

イーゴリ・S・イワノフ  ロシア連邦外相

アメリカが一方的にABM制限条約から離脱すれば、ロシアも戦略兵器の制限という義務に縛られることはあり得ず、現状でのアメリカの姿勢が覆されない限り、核軍縮プロセスそのものにピリオドが打たれることになる。NMDの配備は外部における脅威の変化への対応ではなく、軍事技術の進歩に歩調を合わせたものにすぎず、そこからうまみを得るのは、ルールなきゲームを裏で操る軍産複合体である。国際安全保障にとって戦略的安定の重要性は非常に大きく、当然、これを政治の手段、国内政治の道具、一方的な外交政策の対象としてはならない。

米本土防衛システムと中国の核戦力

2000年8月号

ブラッド・ロバーツ 防衛分析研究所研究員 ロバート・A・マニング 外交問題評議会シニアフェロー

米本土ミサイル防衛(NMD)システムを中国が自国の核抑止力に対する挑戦ととらえるのは間違いなく、大規模な核戦力やアメリカの防衛システムを圧倒するような対抗手段の構築に着手するかもしれない。ワシントン・モスクワ・北京間の調整を欠いた現在の核戦略トレンドは、「攻撃兵器」対「防衛システム」間のとめどない軍拡競争を招く危険があり、そうなればミサイル防衛によって解決されるはずの問題がより複雑化しかねない。ワシントンは、ミサイル防衛計画に中国の懸念や予想される反応を組み込む必要がある。

北京の軍事計画は中台紛争へのアメリカの介入を前提としており、アメリカの航空母艦を沈める必要性も視野に入れている。台北政府の軍事計画でもアメリカの介入が前提とされている。アメリカがどう出るかわからないと考えているのは、実際にはワシントンだけである。(フリーマン)

中国だけに焦点を絞り、台湾に苦言を呈し、アジアのほかの国々を緩衝地域としか考えなくなってしまうときに、アメリカの政策は危険な状態に陥る。中国に焦点を絞った政策ではなく、広範囲にわたる汎アジア的政策こそ、成功への処方箋である。(ウォルドロン)

マクドナルド中国へ行く

2000年8月号

ジェームズ・L・ワトソン/ハーバード大学教授

・マクドナルドやその他のグローバル文化の出現は、非民主的な社会でも出現しつつある中産階級の利益にかなっており、文化帝国主義ではない。
・香港の親たちは、近所のマクドナルドへ行くことを、よい子でいることやよい成績をとったときのご褒美にしている。
・どこまでがトランスナショナル(グローバルな共有文化)で、どこからがローカル(現地文化)なのかを区別することはますます難しくなっている――一体だれの文化なのかと考えるようなら、あなたはすでに「バス」に乗り遅れてしまっている。

特別講演
先進国の高齢化問題を管理していくには

2000年8月号

米外交問題評議会理事長 ピーター・ピーターソン

米外交問題評議会のピーターソン理事長がこのほど来日し、朝日新聞社主催のフォーラムで高齢化問題をテーマに講演した。フォーラムにはトーマス・フォーリー駐日米国大使や小林陽太郎・富士ゼロックス会長ら日米の政財界関係者を中心に二十数人が参加、ピーターソン氏との間で活発な質疑応答もあった。その主な内容を紹介する。

なぜアメリカは対中路線を見直すべきか

2000年8月号

ポール・ヒール 外交問題評議会客員研究員

中国政府の外交路線が、政府指導層内における派閥の力学に左右されているというアメリカ政府の認識は間違っている。中国外交を左右する最大の要因は、北京の指導層が国際環境をどうとらえているかである。台湾をめぐる中国の強硬姿勢は、北京の国際環境の認識面での危機感がまったく新たな、おそらくは決定的な段階にまで達していることを意味する。アメリカの重要な利益が台湾で差し迫った危険にさらされているという認識を捨て去り、米中の相互利益を重視する現実主義路線への転換が必要である。

ハイテク労働者は米国を目ざす
――インフレ予防に移民が果たす役

2000年8月号

ステファン・ゲッツ・リヒター  ザ・グローバリスト・コム社長

空前の経済ブームに沸くアメリカにとっての唯一の懸念はインフレである。理論的には、労働需要の高まりはインフレを誘発しかねないが、情報通信・ハイテク部門を中心に、インドなどからの技術専門職のアメリカへの移民が急増しており、彼らの存在は、ハイテク部門の成長だけでなく、労働市場の需給バランスを維持する安全弁の役割を果たしている。金利引き上げを回避しつつ、ハイテク部門の成長を維持する鍵を握っているのは、意外にも自由な人の流れなのだ。

自由貿易で途上国を支援せよ

2000年7月号

C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学教授

世界の人々に食糧を行き渡らせることができるかどうかは、食糧を余った地域から足りない地域へ移動させる手段として、貿易をさらに開放的にし、うまく利用していくという国際社会の決意に左右される。労働団体、環境保護団体などの反自由貿易連合は、自分たちの保護主義的な思惑を覆い隠そうと、遺伝子組み換え作物という「怪物食品」の問題を巧みに利用している。世界の消費者が遺伝子組み換え作物か有機食品かを自由に選べるようにすれば、国産品と輸入品の差別的扱いを求める必然性はなくなり、保護貿易の動きも緩和される。

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