チェチェン紛争が問いかけるもの
2000年5月号
モスクワは、チェチェンの混迷は急進派イスラムと外国の教条主義者などの忌まわしい外部勢力の仕業だと主張するばかりで、ロシアが「反目しあうナショナリズム」という根深い問題を抱えていることに目を向けようとしない。優れた統治が行われ、魅力的な国家プロジェクトが示されない限り、ロシア連邦内の民族集団が分離独立という選択肢を考え直すとは思えない。イスラムのイデオロギーが、カフカスにおける非イスラム系集団の支配体制に対抗する重要なアイデンティティーとされ、抵抗運動をまとめる統合原理となりつつある。