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テーマに関する論文

プーチンの最後の抵抗に備えよ
―― ロシアの敗戦は何をもたらすか

2023年2月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キメージ アメリカ・カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアの敗北は多くの恩恵をもたらすが、一方で、それが引き起こす地域的、世界的な混乱に備える必要がある。交渉による敗北を受け入れず、ロシアが過激なエスカレーション策をとり、カオスが作り出されれば、その影響はアジア、ヨーロッパ、中東にも及ぶ。世界最大の国土をもつロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などの混乱が引き起こされる危険もある。一方、ロシアが内戦によって破綻国家と化せば、1991年に欧米の政策立案者が取り組むべきだった問題、例えば、ロシアの核兵器を誰が管理するのかといった問題も再燃する。ロシアの無秩序な敗北は、国際システムに危険な空白を作り出す。

中国の衰退が招き入れる危険
―― その意味あいと対策を考える

2023年2月号

ジョナサン・テッパーマン 前フォーリン・ポリシー誌編集長

中国は、アメリカのメディアや指導者たちが描写するような台頭する覇権国ではなく、いまや、よろめいて崖っぷちに立たされている。問題は、アメリカの政治家の多くが、依然として、米中間の争いを中国の台頭という視点で組み立てていること、しかも、中国が高まる危機に直面していることを認めつつも、それをアメリカにとって中立的か肯定的な展開とみていることだ。だが真実はその逆だ。よいニュースであるどころか、中国が弱体化して停滞し、崩壊へ向かえば、中国にとってだけでなく、世界にとっても、繁栄する中国以上に危険な存在になる。

注目すべき5つの外交アジェンダ
―― ウクライナ戦争、台湾、イラン

2023年2月号

ジェームズ・リンゼー 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)

2023年、国際政治はどのような展開をみせるのか。米外交問題評議会のジェームズ・リンゼーは、その手がかりとしてウクライナ戦争、反欧米枢軸の連帯、台湾問題、イランの不安定化、アメリカの経済単独行動主義を挙げる。ウクライナ戦争については「春になり、ロシアがベラルーシの支援を得て新たな軍事攻撃を開始するか、ウクライナがクリミアの奪還を目指せば、状況は一変するかもしれない」と指摘し、反欧米連合については、「アメリカが支配する世界秩序への反発を共有しているだけでは、強固な協調基盤は形成されないかもしれない」とみる。イランについては「2023年12月31日まで、イラン・イスラム共和国は存在しているだろうか」と問いかけている。・・・

防衛力強化に踏み込んだ日本
―― 高まる脅威と日本の新安全保障戦略

2023年2月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

新国家安全保障戦略に即して、軍事予算を大幅に増額し、敵への報復攻撃を可能にする「反撃」能力を整備することで、日本は、これまでの路線から大きな転換を遂げようとしている。この路線を軍国主義とみなすのは、もちろん、間違っている。日本は世界をリードする責任ある地球市民国家だし、その安全保障政策は日米同盟をその基盤に据えている。軍国主義に乗り出すどころか、地域的脅威の高まりを前に、日本は大きなためらいの末に対応している。アメリカとそのパートナーからみれば、日本の新国家安全保障戦略は称賛に値する内容だ。巨大な経済・技術資源を有する平和国家が、地域安全保障への貢献を強化しようと動き出したことを意味する。・・・

現状維持を望む台湾市民
―― 統一はもちろん、独立も望まぬ理由

2023年2月号

ネイサン・F・バトー 中央研究院(台湾)政治学研究所副研究員

圧倒的多数の台湾人が、北京に統治されることにはほとんど関心をもっていない。正式な独立宣言を表明したいわけでもない。独立への支持は年々上昇してきたが、半分をゆうに超える人々が「現状の維持」を望んでいる。なぜ統一に人気がないかは明らかだ。中国と統一すれば、台湾は苦労して手に入れてきた政治的自由のほぼすべてを手放さなければならなくなる。台湾は独自の歴史、文化、アイデンティティ、そして民族的プライドをもっている。ほとんどの人にとって、台湾はすでに完全な主権国家であり、中途半端な状態で存在する自治の島ではない。既成事実をあえて正式に宣言して、波風を立てる必要はない。自らの理想と現状との違いは微々たるものであり、争う価値はないと判断している。

中露の脅威にどう対処するか
―― 場所と課題を選んだ闘いを

2023年1月号

リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター会長

中ロと敵対する世界で、アメリカはどのように行動すべきか。これにどう答えるかが、今後の米外交の中核課題となる。中ロと、あらゆる課題をめぐってあらゆる場所で競い合うのでは、失敗するのは避けられないし、そうする必要もない。これら2大国の課題に対処する外交政策では、地域や課題について優先順位を決め、困難なトレードオフを判断しなければならない。冷静に優先順位を設定し、優先すべき地域と課題を特定し、無視するべきこと、(問題を)緩和するにとどめるべきこと、関心と資源のごく一部だけを割り当てるべきことが何であるかを決める必要がある。もちろん、同盟関係を強化し、国力を強化すべきだが、ワシントンはどこで何のために戦うかを慎重に判断しなければならない。

戦争を終わらせるには
―― ロシアのリアリストに和平の条件を示せ

2023年1月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団スカラー

戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

紛争が長期化する理由
―― 理想主義対現実主義

2023年1月号

クリストファー・ブラットマン シカゴ大学教授(国際関係論)

なぜウクライナ戦争は長期化しているのか。「敗北すれば自分の政権が終わるかもしれないと考えれば、それがロシアにとってどんな結果をもたらすとしても、プーチンは戦い続けるインセンティブをもつはずだ」。しかし、この他にも重要な理由がある。ウクライナがロシアに抵抗し、戦争を速やかに終わらせるための不快な妥協を拒絶していることは、地政学対立において理念と原則が作り出す不変のメカニズムの作用を示している。ウクライナの指導者と市民は「いかなるコストを支払おうとも、ロシアの侵略に屈して、自由や主権を犠牲にすることはない」と決意している。ロシアにとっても、これはイデオロギー戦争でもある。ウクライナ戦争は、戦略的ジレンマだけでなく、双方が妥結という考えを嫌悪しているために、戦いが長期化している。

権威主義体制のレジリエンス
―― その強さのルーツを検証する

2023年1月号

シェリ・バーマン バーナード大学教授(政治学)

反対運動を分裂させて弱体化し、結束したエリート層をもち、強力だが政治的に従順な軍と警察を組織できれば、独裁体制はレジリエントになる。ロシアや中国といった権威主義国家が「自分たちの体制は欧米の民主主義体制よりも優れている」と主張しているだけでなく、対外的な強硬姿勢を強めているだけに、独裁体制の強さ、耐久力の理由を知ることは重要だろう。その強さを革命体験に求める考えもある。だが実際には、権威主義の政府は、歪んだ選挙を実施し、言論の自由や市民社会を制限し、独立した司法などの抑制と均衡のシステムを抑え込むことで体制を強化している。・・・

変化したグローバルな潮流
―― 多極化時代の新冷戦を回避するには

2023年1月号

オラフ・ショルツ ドイツ連邦共和国首相

ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・

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