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テーマに関する論文

サウジ王国の苦しみ

2002年6月号

エリック・ルーロー 元駐トルコ・フランス大使

米メディアからは対米テロをめぐって批判され、国内でも、経済不振、そして社会的緊張と反米主義の高まりに悩まされるサウジアラビア政府はいまや身動きがとれなくなり、王族内の改革派も、保守派が牛耳る政治・宗教システムの囚われ人となっている。近代化と経済発展を促進しようとするアブドラ皇太子の決意は本物だが、その改革の規模とペースは、彼の意図ではなく、むしろ、矛盾に満ちたこの国の政治力学とグローバル化が呼び込む外的圧力の綱引きによって左右されることになろう。

京都合意を超えて
――現実的な地球温暖化対策とは何か

2002年6月号

トマス・C・シェリング メリーランド大学経済学名誉教授

どのように温室効果ガスの排出を削減できるかもわかっていないのに、特定の目標期日までの排出の量的削減という「結果」にコミットしても意味はない。排出権取引という概念も、排出量の少ない国に賄賂を払って条約を批准させ、自分たちは金で量的削減の帳尻を合わせる、ごまかしにすぎない。主要な先進諸国は、今後数十年にわたって温室効果ガス排出削減のために自ら犠牲を払い、その後、発展途上国を関与させる必要がある。膨大な資源がかかわる地球環境問題を解決する鍵は、削減に向けた各国の「自発的」な取り組みのプロセスと、合意を尊重するメカニズムをどうつくるかにある。

アフガニスタンでの戦争を総括する
――なぜビンラディンを取り逃がしたのか

2002年6月号

マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー

アフガニスタンの国内勢力をうまく反タリバーン勢力としてまとめ上げ、新旧の技術を「統合的軍事作戦」として結実させた「不朽の自由作戦」は、マッカーサーの仁川攻略以来の記念碑的な戦いとして評価されることになるかもしれない。しかし、ビンラディンと彼の側近たちがアフガニスタンからの脱出に成功していたり、アフガニスタンが今後再び不安定化し、テロリストが少数でもこの国に居座り続けたりすれば、現在の勝利も色あせたものになる。なぜ、米軍はアルカイダの退路を断つという最も重要な作戦を、パキスタン軍や現地の軍事勢力に任せるという間違いを犯したのか。

遺伝子組み換え技術を世界の恩恵とするには

2002年6月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会シニア・フェロー C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学教授

科学的に立証されていない遺伝子組み換え作物の危険を、ことさらに騒ぎ立てる人々は、新技術を生かした作物の栽培を通じて世界中の消費者と貧しい農民の生活水準を引き上げるという、遺伝子組み換え技術の大きな可能性を摘み取ってしまっている。世界の貧困層のためにバイオテクノロジーを役立てるには、途上国への農業研究援助を増やし、知的所有権をめぐる複雑な問題を管理するシステムが必要になる。研究成果の保護を求める開発者利益と、この技術を世界の経済開発問題に応用することによって得られる公益との間の微妙なバランスを踏まえた管理制度の構築が求められる。

ブッシュ政権の対北朝鮮強硬策の全貌
――「強硬なエンゲージメント政策」の目的は何か

2002年5月号

ビクター・D・チャ ジョージタウン大学外交学部準教授

「対話と交流を重ね、変化が起こるのを辛抱強く待つ」という、かつての対北朝鮮エンゲージメント政策はすでに放棄されている。脅威を醸成し、それをカードに利益を引き出すという平壌のやり方をブッシュ政権が今後容認することはあり得ない。強硬なエンゲージメント政策の本質は、関与策を通じて、平壌の敵意に満ちた意図を暴き、それが白日の下にさらされた場合には強硬策をとり、半島の統一を前提に、東アジアの戦略環境を整備していくことにある。

シャロンの真意はどこにあるのか
――国内政治とパレスチナ強硬策の行方

2002年5月号

アルフ・ベン ハーレツ紙外交担当記者

左派、右派からの相矛盾する要請によって国内的に身動きがとれず、一方で、対パレスチナ強硬策を継続すれば、アメリカの支援を失う。加えて、経済はほぼゼロ成長状態であり、失業率も悪化している。行動の人、シャロンも、経済的・政治的危機を前に身動きのとれぬ状態に追い込まれている。アラファトを打ちのめしたいと願いつつ、国内的に時間稼ぎをして政治的に持ちこたえたとしても、高まる一方の国内経済の回復を求める声を前に、シャロンが今後事態を統御していく力を失っていくことは避けられない。

大局的な最終合意案を示せ

2002年5月号

フセイン・アガ  オックスフォード大学シニア・アソシエート・メンバー   ロバート・マリー クリントン政権アラブ・イスラエル問題担当大統領特別補佐官

数多くの暫定措置がつくりだした悪循環の中、イスラエルは、テロ攻撃を受けている間は交渉できないと信じ、パレスチナ側は、攻撃しなければイスラエルは交渉に応じないと恐れている。殺し合いを確実に食い止める手段はただ一つ、問題の本質を解決し、紛争そのものを具体的かつ公正に解決するような最終合意案を両陣営に示し、これを国際的監視の下で実現していくことだ。課題は、イスラエルとパレスチナの意向に沿うように和解努力を調整することではない。むしろ重要なのは、双方の指導者の能力の限界や意図によって左右されない和平の枠組みをつくることだ。

パレスチナの反乱は終わらない

2002年5月号

クリス・ヘッジ ニューヨーク・タイムズ紙記者

パレスチナの子どもたちは、幼いころから民族主義と復讐の責務を聞かされて育ち、イスラエルに対する反発は世代を超えて社会に浸透している。貧困の中で困難な生活を余儀なくされている占領地の人々にとって、抵抗運動を繰り広げることこそ生活の中で最も没頭できることなのかもしれない。「かつてのインティファーダの英雄たちの時代は去り、今や幅を利かせているのは、ファタハの腐敗とは無縁な、髭を伸ばしたイスラムの戦士たちである」。

中央アジアを安定化させるには

2002年5月号

ポーリーン・ジョーンズ・ルオン  イエール大学政治学助教授 、エリカ・ウェインソール テルアビブ大学政治学助教授

中央アジア各国の政治的抑圧体制ゆえにイスラム主義運動が過激化し、民衆を過激派への支持へと向かわせている。これが秩序の不安定化を招き、さらに、穴だらけの国境線を越えて兵器や過激派が自由に移動していることが状況をさらに深刻にしている。過酷な抑圧体制を敷くウズベキスタンを、ブッシュ政権が、対テロ戦争との関連で中央アジアの覇権国に仕立て上げれば、地域秩序はますます不安定化する。イスラム原理主義の脅威をもっぱら軍事問題としてとらえれば、水資源をめぐる紛争、麻薬、難民、武器の流出入など、テロを招いた根本的問題への対応が放置され、不安定な状態が続くことになるからだ。

イスラム世界とメディアの攻防

2002年5月号

デイビッド・ホフマン 「インターニュース・ネットワーク」代表

アメリカの正義や価値観をいかに訴えかけても、イスラム世界の反米感情がなくなることはない。政治的失策への市民の不満の矛先を、自国政府ではなく、アメリカに向かわせてガス抜きさせるという、アラブ社会の安全弁としての国営メディアが存在するからだ。グローバル社会にイスラムの人々が参加できるようにするには、まずイスラム社会の市民が情報へのアクセスと表現の自由を享受できるようにし、女性やマイノリティーに発言権を認めなければならない。イスラム社会が表現の自由を獲得して初めて、テロが生まれた暗闇に日が差し込むようになる。

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