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テーマに関する論文

イランとロシアのパートナーシップ
―― 孤立国家の連帯は続くのか

2023年4月号

ディーナ・エスファンダイアリー 国際危機グループ(ICG) 中東・北アフリカプログラム 上級アドバイザー

イラン・ロシア間の緊密な協力関係は、特有の環境に導かれている。ウクライナ戦争の兵器需要が高まるなかで、世界の主要なテクノロジー供給国がロシアとの取引を閉ざしていなければ、モスクワがテヘランに助けを求めることはなかっただろう。一方、核合意再建の不調や国内の抗議行動を前に、イランの国際的な孤立も深まっていた。だが、このような歴史の偶発性が、重要な長期的同盟を誕生させることもある。イランとロシアは、引き続き、欧米の影響を押し返し、孤立から身を守り、米主導の秩序に対抗する連合を維持していくだろう。お互いに信頼し合っているわけでも、好きですらないかもしれない。だが、どのような協力なら自国の助けになるかを両国はともに理解している。

中ロ同盟のポテンシャルと限界
―― 分断された世界と中ロの連帯

2023年4月号

パトリシア・M・キム ブルッキングス研究所 フェロー

習近平が、「より欧米中心ではない世界」を目指すためのパートナーにプーチンを選んだことは、結果的に逆効果になるかもしれない。北京とモスクワの優先順位には食い違いがあり、ロシアの先行きもみえないために、両国が協調して既存秩序を抜本的に変革していく能力には限界がある。当面、アメリカと同盟国は、世界の安定を維持することへの北京の強い関心をうまく利用して、両国がより破壊的な道を歩むのを防ぐことに焦点を当てるべきだろう。中ロが世界の多くの地域で既存の国際秩序に対する不満を動員していることを認識した上で、「欧米とその他」、特にグローバルサウスとの間のギャップを埋める作業にも着手する必要がある。・・・

ロボットか労働者か
―― 少子高齢化時代の労働力

2023年4月号

ラント・プリチェット 前世界銀行エコノミスト

先進諸国では出生率の低下と教育水準の向上によって、単純労働を担う労働力がひどく不足している。企業は負担できる人件費で労働者をみつけるのに苦労し、この人材不足が、不必要なオートメーションやその他の技術による解決策を求めるように企業を駆り立てている。だが、ヒトが簡単にこなせる労働タスクを代替する機械(技術)を作ろうとするのは、資本の浪費にすぎない。要するに、労働者の国境を越えた移動を阻む移民規制が、資源を間違った技術開発へ向かわせていることになる。先進国は、少子化が作り出す労働力不足を認識し、より多くの外国人労働者が国内で働けるようにしなければならない。外国人労働者が必要とされる場所に移動できるようにすることで得られる経済的・人道的利益に目を向けるべきだろう。

欧米の対ロシア制裁を検証する

2023年4月号

ノア・バーマン アシスタントライター@www.cfr.org
アンシュ・シリプラプ ライター@www.cfr.org

欧米の対ロシア制裁は、金融からエネルギー、軍事技術までの広範な経済部門をターゲットにしている。しかし、中国やインドはロシアの石油や天然ガスの輸入を逆に増やし、ロシアの近隣諸国の一部は、中継貿易国の役割を担い、欧米の製品を輸入してはロシアに再輸出している。一方で、石油、肥料、小麦、貴金属など多くの重要なコモディティの輸出国として極めて重要なロシアは、制裁を課すのが難しいターゲットだと指摘するアナリストもいる。実際、国際通貨基金(IMF)は最近、ロシアの国内総生産(GDP)は2023年に0.3%成長するとの予測を示した。・・・

インド太平洋経済枠組みの試金石
―― いかに同盟国の同意をとりつけるか

2023年3月号

メアリー・E・ラブリー ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

アメリカが自由貿易合意への抵抗感をもっているために、インド太平洋経済枠組み(IPEF)は一般的な貿易協定とは違って、参加国に米市場への特恵的アクセスをオファーしていない。もちろん、米市場の開放という具体的な見返りがない限り、交渉参加国が、IPEFが求める労働政策や環境政策の見直しへの国内の反発を克服するのは難しくなる。「中国抜き」という条件を満たした国に米市場への特恵的アクセスを認めれば、生産コストを上昇させるような新たな義務を負うとしても、経済的には合理的かもしれない。だが、そうしない限り、ワシントンは急成長するインド太平洋地域の発展に影響を与えるチャンスを再び潰してしまう恐れがある。・・・

台湾の安全と平和を守るには
―― 最善の対策は軍事領域にはない

2023年3月号

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所  フリーマンチェア(中国研究)
ライアン・ハス ブルッキングス研究所 シニアフェロー

多くのアナリストや政策立案者が提言している軍事領域の決定で、アメリカの全般的台湾アプローチを規定してはならない。今後5年間に配備可能な米軍の追加戦力では、台湾海峡の軍事バランスを根本的に変えることはできない。ワシントンの政策の最終目標は台湾の平和と安定の維持であり、平和を維持するには、中国の不安の原因を理解し、習近平を追い込まないようにして、統一が遠い将来の課題であると認識させる必要がある。ときには、難題の解決をあえて目指さず、先送りすることが最善の政策になる。・・・

民主主義を脅かすスパイウェアの脅威
―― 標的は野党と反政府勢力

2023年3月号

ロナルド・J・デイバート トロント大学教授(政治学)

イスラエルに拠点を置く「NSOグループ」がプログラミングしたスパイウェア「ペガサス」が、各国の著名な野党政治家、ジャーナリスト、人権活動家のデジタル機器から発見されている。ペガサスは、最新のスマートフォンに気づかれずに侵入でき、オペレーターはターゲットの個人情報にほぼ完全にアクセスできる。こうしたスパイウェアを利用しているのは、世界の独裁者だけではない。多くの民主国家も、人権と説明責任についての確立された規範を侵害する形で、スパイウェアを利用し始めている。しかも、この産業はほとんど規制されていない。

中国の経済強制策を抑止せよ
―― 集団的レジリアンスの形成を

2023年3月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

北京はこの十数年にわたって、「台湾と交流し、香港の民主化を支持した貿易相手国、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットにおける抑圧を批判した国や企業」に禁輸措置をとり、大衆の不買運動を焚きつけて報復してきた。北京が貿易パートナーに対して経済的な無理強いをする理由の一つは、「相手国が自国に報復措置をとることはない」と自信をもっているからだ。だが、単独では劣勢でも、オーストラリア、日本、韓国、アメリカがまとまれば、中国に対抗できる。この4カ国の連帯に北京の無理強いに遭ったことがある諸国を参加させれば、集団的レジリアンスはさらに強力になり、中国の高圧的行動、経済的無理強いを抑止できるようになる。

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

国益と自由世界擁護の間
―― ウクライナとアメリカの国益

2023年3月号

ロバート・ケーガン ブルッキングス研究所シニアフェロー

オバマ大統領(当時)は、「ウクライナは、アメリカよりもロシアにとって重要であり、同じことは中国にとっての台湾についても言える」と何度も語っている。一方で、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。(関与しなければ)「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている。

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