1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

新エネルギー安保を構築せよ  
――現実に即した新パラダイムを

2006年3月号

ケンブリッジ・エネルギーリサーチ・ アソシエーツ(CERA)理事長 ダニエル・ヤーギン

先進国ではエネルギー安保とは十分な供給を妥当な価格で確保することと考えられているが、産油国、途上国にとっては別の意味合いをもつ。需要ショックを経験しているいまや、供給ショック、先進国の立場だけを前提とする現在の安保システムでは状況に対応できない。需要の高まりだけでなく、テロの脅威、産油国の政治的混乱、紛争、石油シーレーンでの海賊行為という問題も、エネルギー安保の脆弱性を高めている。中国とインドを先進国のエネルギー安保システムに参加させ、世界のすべてのサプライチェーンとインフラを守り、危機に際しては規制を柔軟に緩和し、国際情勢を十分に視野に入れた新たな安全保障構想を構築する必要がある。

膨大な石油資源を持ちながらも、治安問題、インフラの不備、さらには法環境の整備がまだできていないために、イラクは実質的に石油を輸入している状態にある。大手外国資本も、治安問題ゆえにイラク石油資源への投資にはまだ乗り気ではない。さらにやっかいなのは、石油からの歳入をどう分配するかについて国内的な対立があることだ。石油資源豊かな北部と南部では、連邦政府が管理するのは既存の油田だけなのか、これから発見される油田も含むのかをめぐって論争が起きているし、すでにスンニ派は、クルド人がバグダッドを迂回して、外国の石油企業と開発合意を交渉するのは憲法に反すると批判している。

石油需要の増大は、エネルギー資源の輸入国から輸出国への世界規模での大規模な富の移転という現象を引き起こしており、エネルギー資源輸出諸国の経常黒字は最近では4000億ドル規模に達している。とはいえ、これが直ちに石油輸出国のGDPの引き上げにつながるわけでも、1人あたり所得の増大をもたらすわけでもない。その理由は多岐にわたる……

原油価格の高騰が続くなか、石油に替わるエネルギー資源の開発を模索していく価値は十分にあるが、代替エネルギーに過大な期待をかけるのはやめた方がいい。運輸交通部門などで石油以上に効率的なエネルギー資源を得ることは、不可能に近い。しかも、代替資源に切り替えるにはインフラを一新しなければならないため、そのコストを考えるといかなる代替エネルギー資源も、石油よりも割高になってしまう。ただし、地球環境への長期的な負担を軽減するには、代替エネルギーの研究開発を今後も進めていく必要がある。

CFRインタビュー
ポール・ブレマーが回顧するイラク占領

2006年2月号

ポール・ブレマー 前暫定占領当局(CPA)代表

米兵力の増強を認めないペンタゴンとの対立、旧イラク軍解体と新イラク軍創設の真相、イラク統治評議会(IGC)はなぜ機能せず、ゲリラ勢力に対する作戦はなぜうまくすすまなかったか。2003年5月からイラクが主権を回復する04年6月まで暫定占領当局(CPA)代表を務めたポール・ブレマーが回顧するイラク占領の真実。05年1月にイラク占領の回顧録(My Year in Iraq: The Struggle to Build a Future of Hope)を出版したブレマーは、H・キッシンジャー元国務長官の秘書官、駐オランダ米大使などを務めた国務省官僚で、テロ問題の専門家。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

新生イラクにおける女性とイスラム

2006年2月号

イソベル・コールマン 米外交問題評議会シニア・フェロー

イスラム法を重視する憲法が導入されたことで、イラクはタリバーン時代のアフガニスタンのような原理主義、あるいはイランのような神権政治へと回帰し、女性に対する差別と抑圧がイスラムの名の下に正当化されてしまうのだろうか。「憲法がイスラム法重視をうたっているからといって、直ちにイラク人女性が難しい状況に置かれるわけではない」とコールマンはみる。どのようなイスラム法の解釈が新生イラクの法制度において優先されるかで道は分かれる、と。イスラム保守派人口が多い環境のなかでは、西洋の論理を振りかざすのではなく、イスラム法解釈の枠内で、シャリアの進歩的解釈を盾にイスラム改革をめざすべきだ、と彼女は提言する。

マドラサは本当に脅威なのか
 ――イスラム過激主義とマドラサ

2006年2月号

イギリス外務連邦省 アレキサンダー・エバンス

専門家たちは、パキスタンのマドラサが黒幕であるとみられる比較的少数の紛争やテロの事例を基に、すべてのマドラサが狂信主義を子供たちに植え付けていると判断してしまっている。だが実際のマドラサはわれわれがイメージするようなものではない。南アジアの村の子供たちの多くにとって、マドラサは読み書きを習える唯一の場所だし、マドラサは親を失った子供たちや貧困家庭の子供たちの多くに社会サービスを提供している。マドラサに対して上から何かを強制し、締め付けるのではなく、マドラサ内部での改革を促す必要がある。

CFRインタビュー
米副大統領前顧問が語る北朝鮮問題の本質
――アメを与えるだけでは問題は解決しない

2006年2月号

アーロン・L・フリードバーグ 前国家安全保障問題担当米副大統領副補佐官

「北朝鮮にアメを与えれば、彼らも未来に期待をもつようになり、援助や安全の保証と引き替えにこれまで試みてきた核開発計画を放棄すると考えるのは非現実的だ」。金正日の目的は自らの生存を確保することにあり、自分の権力基盤を揺るがす開放路線・経済改革路線などまじめに検討してはいない、とみるアーロン・フリードバーグは「北朝鮮との交渉を続けるとともに、彼らを締めあげる必要がある」と述べる。チェイニー米副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官を務めた同氏は、「紙幣・貨幣偽造や資金洗浄などの北朝鮮の問題を公表し、偽造たばこ、麻薬取引など、北朝鮮が関与していると思われる不法行為を暴き、資金源を断つ必要がある」と強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRインタビュー
それでもイラクの政治プロセスは破綻しない

2006年2月号

W・パトリック・ランゲ 前米国防情報庁中東・対テロ部長

シーア派の聖地であるアスカリ聖廟が爆破された事件によって、シーア派とスンニ派間の紛争が誘発され、すでに有力なスンニ派指導者を含む165人が犠牲になっている。イラクの暴力レベルがかつてないほどに高まり、無秩序状態に陥るなか、シーア派の指導者はシーア派の群衆に自重を呼びかけている。メディアはイラクが内戦に陥る危険を指摘し、ニューヨーク・タイムズ紙も「政治交渉は崩壊した」と伝えた。しかし、米国防情報庁の前中東・対テロ部長のW・パトリック・ランゲは、こうした見方には与しない。これまではシーア派が大規模な反撃を慎んできただけの話で、実際には、イラクでは長く宗派間紛争による内戦状態にあったとみるランゲは、「宗派間紛争はいずれ下火になっていき、シーア派は今後も政治権力の基盤固めに取り組み、スンニ派は政府にゲリラ戦争を挑み続けるだろう」と今後を分析した。聞き手はリオネル・ビーナー(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRインタビュー
イラクの今後を左右する
スンニ派とシーア派の関係

2006年2月号

シブリー・テルハミ メリーランド大学教授

「少数派に歩み寄ってこそ、多数派としての価値を生かせるようになる。イラクのシーア派もイラク統一を望むのなら、未来に思いをめぐらして今を考え、少数派のスンニ派に手を差し伸べるべきだろう」。アラブ政治の専門家シブリー・テルハミはこう指摘しつつも、イラクの今後は楽観を許さないとみる。「現時点では、スンニ派の指導者のなかに、シーア派との妥協を受け入れるという英断を下せるような人物はみあたらないし、シーア派の指導者のなかにも、スンニ派に妥協を提示できるような人物はおらず、依然として、イラクの政治は民族や宗派で規定されている」と彼は指摘する。イラク中部にあるシーア派の聖地「アスカリ聖廟」の爆破事件の余波のなか、2月下旬にはシーア派の武装手段がスンニ派モスクを襲撃する事件が頻発し、いまやスンニ派とシーア派の緊張は一層高まっている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

Page Top