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テーマに関する論文

マドラサは本当に脅威なのか
 ――イスラム過激主義とマドラサ

2006年2月号

イギリス外務連邦省 アレキサンダー・エバンス

専門家たちは、パキスタンのマドラサが黒幕であるとみられる比較的少数の紛争やテロの事例を基に、すべてのマドラサが狂信主義を子供たちに植え付けていると判断してしまっている。だが実際のマドラサはわれわれがイメージするようなものではない。南アジアの村の子供たちの多くにとって、マドラサは読み書きを習える唯一の場所だし、マドラサは親を失った子供たちや貧困家庭の子供たちの多くに社会サービスを提供している。マドラサに対して上から何かを強制し、締め付けるのではなく、マドラサ内部での改革を促す必要がある。

CFRインタビュー
米副大統領前顧問が語る北朝鮮問題の本質
――アメを与えるだけでは問題は解決しない

2006年2月号

アーロン・L・フリードバーグ 前国家安全保障問題担当米副大統領副補佐官

「北朝鮮にアメを与えれば、彼らも未来に期待をもつようになり、援助や安全の保証と引き替えにこれまで試みてきた核開発計画を放棄すると考えるのは非現実的だ」。金正日の目的は自らの生存を確保することにあり、自分の権力基盤を揺るがす開放路線・経済改革路線などまじめに検討してはいない、とみるアーロン・フリードバーグは「北朝鮮との交渉を続けるとともに、彼らを締めあげる必要がある」と述べる。チェイニー米副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官を務めた同氏は、「紙幣・貨幣偽造や資金洗浄などの北朝鮮の問題を公表し、偽造たばこ、麻薬取引など、北朝鮮が関与していると思われる不法行為を暴き、資金源を断つ必要がある」と強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRインタビュー
それでもイラクの政治プロセスは破綻しない

2006年2月号

W・パトリック・ランゲ 前米国防情報庁中東・対テロ部長

シーア派の聖地であるアスカリ聖廟が爆破された事件によって、シーア派とスンニ派間の紛争が誘発され、すでに有力なスンニ派指導者を含む165人が犠牲になっている。イラクの暴力レベルがかつてないほどに高まり、無秩序状態に陥るなか、シーア派の指導者はシーア派の群衆に自重を呼びかけている。メディアはイラクが内戦に陥る危険を指摘し、ニューヨーク・タイムズ紙も「政治交渉は崩壊した」と伝えた。しかし、米国防情報庁の前中東・対テロ部長のW・パトリック・ランゲは、こうした見方には与しない。これまではシーア派が大規模な反撃を慎んできただけの話で、実際には、イラクでは長く宗派間紛争による内戦状態にあったとみるランゲは、「宗派間紛争はいずれ下火になっていき、シーア派は今後も政治権力の基盤固めに取り組み、スンニ派は政府にゲリラ戦争を挑み続けるだろう」と今後を分析した。聞き手はリオネル・ビーナー(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRインタビュー
イラクの今後を左右する
スンニ派とシーア派の関係

2006年2月号

シブリー・テルハミ メリーランド大学教授

「少数派に歩み寄ってこそ、多数派としての価値を生かせるようになる。イラクのシーア派もイラク統一を望むのなら、未来に思いをめぐらして今を考え、少数派のスンニ派に手を差し伸べるべきだろう」。アラブ政治の専門家シブリー・テルハミはこう指摘しつつも、イラクの今後は楽観を許さないとみる。「現時点では、スンニ派の指導者のなかに、シーア派との妥協を受け入れるという英断を下せるような人物はみあたらないし、シーア派の指導者のなかにも、スンニ派に妥協を提示できるような人物はおらず、依然として、イラクの政治は民族や宗派で規定されている」と彼は指摘する。イラク中部にあるシーア派の聖地「アスカリ聖廟」の爆破事件の余波のなか、2月下旬にはシーア派の武装手段がスンニ派モスクを襲撃する事件が頻発し、いまやスンニ派とシーア派の緊張は一層高まっている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

「政府の内外から専門家を集めて改革を進め、新たな作戦地域にすぐれた広報チームを迅速に派遣し、新聞、ラジオ、テレビ、インターネットすべてを使った広報を展開できるようにしなければならない。戦略的コミュニケーションラインの確立が遅れれば、その空白を埋めるのは敵か、何が起きているかを正確に伝えることなどあり得ない情報提供者たちとなる。……24時間体制のプレスセンターをつくり、インターネットなど新しいコミュニケーション手段をもっと重視するべきだ。世界中の多くの人々にとって新聞はもはや最も重要な情報源ではない」(D・ラムズフェルド)

ロシアの若者の歴史認識を問う
――高まるスターリンへの評価

2006年2月号

サラ・E・マンデルソン/戦略国際問題研究所(CSIS)シニア・フェロー
セオドア・P・ガーバー/ウィスコンシン大学マディソン校社会学教授

ロシアの若者の多くは、スターリンに対してあいまいで、一貫性に欠ける、不安定な見方をしている。だが、こうしたあいまいな態度に危険が潜んでおり、実際、若者のスターリンへの評価は次第にプラスへと転じつつある。これらが問題なのは、歴史的な記憶、あるいは歴史的な記憶の喪失が、具体的な政治的流れをつくり出しかねないからだ。国や社会が過去をどうとらえるかで、歴史をいかに今に位置づけるかが決まる。若いロシア人がスターリン時代に何が起きたかについて無知だったり、ソビエト・ロシア全域での恐怖政治を制度化した凶暴な独裁者を前向きに評価したりしているようでは、ロシアが近代的な民主社会に変貌していくのは難しい。

人類は殺し合うサルか
――霊長類の平和と人類の平和

2006年2・3月号

ロバート・M・サポルスキー/スタンフォード大学神経学・生物科学教授

人類が他の霊長類と比べ、特段ユニークなわけではない。人類も、緊密で豊かな社会生活を送る霊長類の一種にすぎない。霊長類には平和的な種も暴力的な種もおり、その行動は、社会構造とエコロジカルな環境に左右されるが、人類は、穏やかな霊長類よりも、暴力的な霊長類との共通点のほうが多い。彼らの本質はわれわれの本質なのだ。だが、より重要なポイントは、本質的に暴力的な性向をもっていても、平和を実現できる霊長類もいるということだ。考えるべきは、どのような状況なら霊長類は平和を実現できるのか、そして人類がそのような平和を実現できるかどうかだ。
協調する小集団内で暴力ざたが起きる可能性は低いが、一方でこの集団は対外的に大きな問題を引き起こす。実際、価値を共有する小規模の均質的な集団の存在は、社会全体の調和という点からみれば悪夢だし、アウトサイダーにとっても危険である。だが、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団内の協調を維持する方法はある。一つの方法は交易だ。自発的な経済交流は利益を生み出すだけでなく、社会的紛争の発生を低下させる。集団間の境界線があいまいで、メンバーが入れ替わる分裂・融和型社会構造も、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団の協調を維持するためのモデルになる。

CFRインタビュー
イラン核開発問題をめぐる米欧協調の危うさ
―― 打開の鍵をにぎるのはロシアだ

2006年1月号

リー・フェイシュタイン 米外交問題評議会シニア・フェロー

現在のところ、イランの核開発問題に対して共同歩調をとっているとはいえ、アメリカとヨーロッパの脅威認識にはかなりの気温差がある。「ヨーロッパ人はすでに対イラン貿易制裁には反対すると表明している」。リー・フェイシュタイン(米外交問題評議会<CFR>シニア・フェロー)は、イランの核開発の脅威の本質、切迫性をめぐって、米欧の認識は大きく違っているし、米欧は経済制裁の効果についても違う意見を持っていると指摘し、今後もアメリカとヨーロッパが同じ土俵に立ち続けることができるかどうかを疑問視する。むしろ、イラン問題をめぐって何らかの進展が期待できるのは、ロシアでウラン濃縮の合弁事業を立ち上げる妥協案が進展した場合だろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
邦訳文は英文からの抜粋。

CFRインタビュー
イランの核開発問題
―― ロシア案の受け入れか、安保理付託か

2006年1月号

ジョセフ・シリンシオーネ カーネギー国際平和財団 核不拡散研究プロジェクト・ディレクター

すこしばかり核開発計画を先にすすめ……それで、ヨーロッパが立場を後退させるかどうか、「状況を容認するか、あるいは、状況を批判しつつも具体的行動はとらないか」を見極めるという戦術をこれまでテヘランは慎重に試みてきた。イランの核開発に向けた戦術をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団の核不拡散研究プロジェクト・ディレクター)は、だが今回ばかりは、イランは強硬な発言を繰り返すことで、ヨーロッパの出方を見誤ったとみる。「一線を越えないように配慮しつつ、核兵器開発に必要な全技術を獲得すること」がテヘランの戦術であるにも関わらず、アフマディネジャド大統領は、「平和利用という自分たちの主張に酔いしれるあまり」、あるいは、「国内政治面での窮状を打開しようと」、今回は、勇み足を踏んだと分析する。安保理への付託か、ロシア案の受け入れか。その大きな鍵を握るのはロシアになるとシリンシオーネは語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
中国は北朝鮮とイランをどうみているか
―― 北京の核不拡散路線と米中関係

2006年1月号

アダム・シーガル
米外交問題評議会シニア・フェロー

現在の中国が北朝鮮の非核化を望んでいるのは明らかだが、一方で中国には、北朝鮮崩壊というシナリオを回避したいという思惑もある。その理由についてアダム・シーガル(CFRシニア・フェロー)は次のように述べる。「中国が恐れているのは、(北朝鮮が崩壊すれば)大量の難民が中朝国境に押し寄せ、すでに朝鮮民族が数多く暮らす国境地域をますます不安定化させてしまうことだ。北朝鮮の崩壊とともに、(すでに38度線付近に駐留している)在韓米軍が朝鮮半島を北上してきたら、どうなるかという不安もある」。一方イランの核問題については、「中国にとって、イランよりもアメリカのほうがはるかに重要な国であり」、「イランに対する経済制裁には反対しつつもその旗振り役にはロシアになってほしいと北京は考えていると思う」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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