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テーマに関する論文

なぜ今後10年が将来のエネルギートレンドを左右するのか
――エネルギートレンドに関するIEA報告から

2007年1月

スピーカー
ファティ・バイロル/国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミスト
司会
ジャッド・モーアワッド/ニューヨーク・タイムズ紙 エネルギー担当記者

現在経済ブームのなかにある中国とインドは、エネルギーインフラに莫大な投資を行い、発電所、精製所、送電網その他を整備しており、両国は今後50年から60年のエネルギーパターンを左右するような一連の決定を下しつつある。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟諸国にとっても今後の10年間は重要だ。OECD加盟国が発電所、送電網などエネルギーインフラに大規模な投資を行ったのは第2次世界大戦直後で、これらのインフラの多くを新しいインフラに置き換えていかなければならないからだ。どのような技術、燃料資源、どのような設計が好ましいのかを、今後を見据えて判断しなければならない。今後の10年間は、われわれがエネルギー路線を見直すうえで非常に重要な時期になり、この間に現在の路線を見直さなければ、好ましくないエネルギートレンドを覆すのはますます難しくなる。

CFRブリーフィング
アメリカはガソリン消費を削減できるか

2007年1月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会(CFR) 科学技術担当非常勤シニア・フェロー、ロバート・マクマホン www.cfr.org 副編集長

この30年間にわたって、アメリカ政府は車の燃費改善に向けた大がかりな措置を導入しようとはしなかった。1990年代以降は、大きなトラックやスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の市場での人気が高まり、新車の平均燃費は向上するどころか、低下するようになった。だが、昨今では輸入石油への依存の高まりが危険視され、二酸化炭素排出による地球温暖化問題が再度注目されるようになり、ガソリン消費の削減に向けた措置も検討されている。ブッシュ大統領は、1月24日の一般教書演説で、10年以内にアメリカのガソリン使用量を20%削減させるという大胆な構想を発表した。実際にそうできるかどうかの鍵を握るのが、バイオ燃料(エタノール)の開発と、燃費の改善だ。だが、エタノールの開発をめぐっては、その現実性をめぐってさまざまな議論があるし、燃費の改善についても、各種利益団体の圧力で議会は身動きがとれなくなる恐れもある。

イランとの選択的パートナーシップを
――新しい中東の現実をふまえた問題管理策を

2007年1月号

ゲーリー・シック コロンビア大学ガルフ2000プロジェクト エグゼクティブ・ディレクター

アメリカとイランは、石油資源を持つペルシャ湾地域における重要なプレーヤーであり、両国の関係がどのようになるかでこの地域の命運が左右される。イランの台頭と強大化、出口の見えないイラクの混迷、そして姿を現しつつあるシーア派の三日月地帯に特徴づけられる新しい中東に対処していくにはどうすればよいのか。重要なのは、イラン問題は当面解決できず、管理していくしかないことを認識することだとレイ・タキーは言う。変化し続けるさまざまな問題をめぐって、アメリカは、イランとの選択的パートナーシップを構築する必要があるし、イランを世界経済と地域安全保障の枠組みに参加させれば、アメリカは共通の懸念についてイランと協力していく基盤を築くことができる、と同氏は指摘している。

いまこそ、包括的中東和平を試みよ

2007年1月号

エドワード・P・ジェレジアン 元駐イスラエル米大使

アラブ・イスラエル紛争に始まり、イラクの混迷、イラン問題、中東地域全域での政治・経済改革の必要性、過激主義、そしてテロリズムにいたるまでの、中東における主要な問題のすべては、不可分に結びついている。一部の問題の管理を試みても、この地域が抱える一連の問題を解決することはできない。アラブ・イスラエル紛争の平和的な解決と、中東全域での政治・経済改革を促してイスラム世界の穏健派を助けることをアメリカの政策目標に据え、包括的交渉戦略をとる以外に手はない。いま求められているのは、中東の平和構築に関与していくという政治的意志である。

感情の衝突
―― 恐れ、屈辱、希望の文化と新世界秩序

2007年1月号

ドミニク・モイジ フランス国際関係研究所上席顧問

西洋世界は「恐れの文化」に揺れ、アラブ・イスラム世界は「屈辱の文化」にとらわれ、アジア地域の多くは「希望の文化」で覆われている。アメリカとヨーロッパは、イスラム過激派テロを前に恐れの文化を共有しながらも分裂し、一方、イスラム世界の屈辱の文化は、イスラム過激派の思想を中心に西洋に対する「憎しみの文化」へと姿を変えつつある。かたや、さまざまな問題を抱えているとはいえ、中国、インドを中心とするアジア地域の指導者と民衆は、西洋とイスラムの「感情の衝突」をよそに、今後に向けた期待を持っており、経済成長が続く限り、アジアでは希望の文化が維持されるだろう。恐れの文化、屈辱の文化、そして希望の文化のダイナミクスと相互作用が、今後長期的に世界を形づくっていくことになるだろう。

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年12月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イランVS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

現代版奴隷貿易を阻止するには

2006年12月

イーサン・B・カプスタイン 仏欧州経営大学院(INSEAD)教授

人身売買業者は、貧しい国の貧しい人々に遠い国での高賃金の仕事を約束してその気にさせ、渡航手続き、必要書類の整備、渡航先での仕事を見つけるための資金を法外な金利で貸しつける。しかし、渡航先には仕事はなく、何千ドルもの借金だけが残る。被害者はその後すべての渡航書類を奪われ、偽名を使っての強制労働を強いられる。当局に訴えたり逃亡を試みたりすれば、痛めつけるか殺すと、被害者とその家族は脅される。国連の推計によると、人身売買産業が得る利益は年間約320億ドル。いまや「127カ国の出身者が、137カ国において強制労働を強いられ、搾取されている」。

中国の人民元切り上げ問題を考える
――人民元切り上げで「グローバルな不均衡」をなくせるのか

2006年12月号

スティーブン・ローチ モルガンスタンレー・チーフエコノミスト(当時)
デスモンド・ラックマン アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)レジデントフェロー

ワシントンは、中国政府は輸出競争力を強化しようと、人民元レートを人為的に低いレベルにとどめようとしていると批判し、北京が人民元を早急に切り上げることが、アメリカの膨大な経常赤字と中国の巨大な貿易黒字という「グローバルな不均衡」を是正することにつながると主張してきた。しかし、人民元が切り上げられてもアメリカの経常赤字はなくならないとする見方もあれば、人民元が切り上げられなければ、米欧では保護主義が台頭して、グローバル経済の流れが停滞するという議論もある。アメリカの消費者がモノを買いすぎることが問題なのか、それとも、中国が為替操作を通じて輸出競争力を強化しようとしていることが問題なのか。スティーブン・ローチとデスモンド・ラックマンという2人のエコノミストが検証する中国の人民元切り上げ問題。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

情報と戦争の歴史
――カルタゴの戦いから対テロ戦争まで

2006年11月号

デビッド・カーン 歴史家

19世紀に陸軍参謀部が情報収集を制度化し、第一次世界大戦期に無線傍受が重視されるようになり、第二次世界大戦と冷戦期には、情報担当官は、戦場の司令官同様に大きな役割を果たすようになった。だが、情報があっても、戦力がなければそれを生かせない。情報によって作戦の焦点を絞り、効率化を図り、戦場での優位を手にできるが、敵に勝利するには戦力が必要だ。非国家アクターに対する水面下での戦いをめぐって情報がかつてなく重視されている現在の対テロ戦争にしても、同じことが言える。

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