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2006年6月号
近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。
これまで世界各国の生産増大と雇用を支えてきたアメリカの旺盛な消費にもついに陰りが見え始めてきた。今後アメリカの消費は衰え、家計貯蓄が増えていく。アメリカにとって貯蓄増大は、長期的には外資への依存率を引き下げ、米企業の設備投資、生産性を向上させ、将来の生活レベルを引き上げるような構造的投資が進むことを意味する。しかし一方で、世界経済は大きな課題を抱え込むことになる。高い貯蓄率は実質金利を引き下げ、ドル価値は低下して、アメリカの輸出競争力は高くなる。この現象は、アメリカの輸出が増大し、輸入が減って経常赤字の対GDP比バランスが回復され、完全雇用が実現するまで続く。他の諸国にしてみれば、それは輸出の低下とアメリカからの輸入増大を招くことになる。重要なのは、諸外国が、生産と雇用を維持できるように内需拡大策を準備しておくことだ。
主要国の指導者はG8サミットに参加するために、7月にサンクトペテルブルクに集う。G8の閣僚レベル会合はすでに今年に入って数回実施されているが、主要国の指導者が集う年次サミットはこのフォーラムのハイライトだ。今年は議長国としてロシアがはじめてG8のホスト国になる。しかし、民主化からの後退をみせ、権威主義路線を強めるロシアのメンバーシップを疑問視する声が各方面から挙がっている。米議会ではサミットのボイコットを求める動きもある。また、中国とインドを除外したG8では、もはや現在の世界の現実をうまく反映できないし、すでにG8は時代遅れの存在で陳腐化しているという見方もある。エネルギー、教育、感染症などが今回のアジェンダとしてすでに特定されているが、真のアジェンダは、ロシアの政治路線とG8の存在理由そのものにあるとみる専門家もいる。
シリコンバレーで5年から7年働いた経験をもつ中国人、カーネギーメロン大学で科学技術を教えていた中国人などがいまや母国へと帰国している。帰国後、彼らは自分で研究所や企業を立ち上げるか、中国に進出している多国籍企業で働いている。(A・シーガル)
中国側からの技術移転を求める圧力は大きい。不本意ながら、米企業が要請に応じる場合もあれば、拒絶する場合もある。日本企業は米企業よりも、中国側の技術移転要請に強く抵抗する傾向がある。日本企業が、どの程度抵抗し続けられるかはよくわからない。(W・アーチー)
大気汚染緩和のために、例えば、カリフォルニアの環境規制当局は、環境を特に悪化させるような、発ガン性物質であるベンゼンや、硫黄化合物をガソリンから取り除くことを義務付けている。「問題は、環境基準をクリアできるようなガソリンを作り出せる精製所が少なく、これがガソリンの供給を逼迫させている原因の一つとなっていることだ」と国際経済研究所の石油問題の専門家、フィリップ・K・バレジャーは指摘する。今年もまたハリケーンで精油所に被害が出るようなら、またガソリンの供給が乱れる。だが「環境規制を一時的に緩和させれば、供給の逼迫を回避できる」とバレジャーは言う。また、「ガソリンに25%のエタノール含有を義務付けるだけで、一日当たり250万~300万バレルの原油消費を節約することができ、その結果、原油価格の低下にも繋がる」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)
2006年5月号
ブッシュ政権が北朝鮮との平和条約交渉の可能性を示唆したことで、北朝鮮の核問題をめぐる外交的膠着状態が打開されるかに思われたが、専門家の多くは、そうした並行協議で貿易、人権、紙幣偽造などの厄介な問題が解決しやすくなるとは考えていない。むしろ、「アメリカに次期政権が誕生するまで待つのが北朝鮮の戦略のようだ」とみる専門家もいる。中国と韓国が北朝鮮に対する強硬路線をとることに難色を示すなか、平壌は交渉に参加するか離脱するかを勝手に決め、離脱した場合には、交渉復帰の条件を示すというやり方を繰り返している。「ゼロサム的な世界観しか持っていない北朝鮮から色よい返事を引き出すには、われわれの目的のすべてを断念し、彼らの目的のすべてを受け入れなければならない」と北朝鮮の頑迷さに、半ばさじを投げる専門家もいる。
2006年5月号
「イランを軍事攻撃できるかどうか。その答えはイエス。攻撃後のイラン国内状況は、当初は今よりも悪くなるし、反体制派や改革主義者は抑圧される。長期的に大きな反体制運動が起きるか。答えはイエス。対米テロは起きるか。これは間違いなく起きる」(R・ゲレット)
「イランの核施設は大規模なトンネルで繋がれていることもわかっている。このトンネルを破壊するのは非常に難しい。ペンタゴンでこのトンネルを破壊するにはどうすればよいかが研究されているが、これを破壊するには、地表貫通型核兵器が必要だと言われている」(K・ポラック)
2006年5月号
2003年4月、バグダッドは陥落し、歴史的に最も秘密主義で残忍な政権の実態を解明する機会が生まれた。米統合軍司令部は、かつてはアクセスできなかったイラク政府文書を基に、サダム・フセイン政権がどのように機能し、行動していたかをテーマとする検証を命じた。拘束された数十人の政治・軍事指導者への聞き取り、数十万の公文書を基盤とする2年がかりのプロジェクトのリポートのポイントをここに掲載する。
2006年5月号
ブッシュ政権が北朝鮮との平和条約交渉の可能性を示唆したことで、北朝鮮の核問題をめぐる外交的膠着状態が打開されるかに思われたが、専門家の多くは、そうした並行協議で貿易、人権、紙幣偽造などの厄介な問題が解決しやすくなるとは考えていない。むしろ、「アメリカに次期政権が誕生するまで待つのが北朝鮮の戦略のようだ」とみる専門家もいる。中国と韓国が北朝鮮に対する強硬路線をとることに難色を示すなか、平壌は交渉に参加するか離脱するかを勝手に決め、離脱した場合には、交渉復帰の条件を示すというやり方を繰り返している。「ゼロサム的な世界観しか持っていない北朝鮮から色よい返事を引き出すには、われわれの目的のすべてを断念し、彼らの目的のすべてを受け入れなければならない」と北朝鮮の頑迷さに、半ばさじを投げる専門家もいる。