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テーマに関する論文

新しい中東
――アメリカの時代の終わりとイランの台頭

2006年11月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

第1次湾岸戦争が中東におけるアメリカの時代を開いたのに対して、ワシントンが自ら戦争の道を選択した第2次湾岸戦争は、中東におけるアメリカの時代を唐突に終わりへと向かわせた。次なる中東秩序では、外部勢力の影響力は穏当なレベルにとどまり、現地の勢力、つまりイランが大きな力を持つことになる。イラクに対してだけでなく、ハマスとヒズボラに対しても大きな影響力を持つイランは、自らのイメージ通りに中東をつくり替えようとする野心と、その目的を実現するだけの力を持っている。「平和で繁栄し、民主的なヨーロッパのような地域へと中東を生まれ変わらせる」というビジョンが実現されることはもうあり得ない。より可能性が高いのは、アメリカと世界、そして自分の地域を大いに苦しめるような「新しい中東」が誕生することだ。

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

中国の改革とリーダーシップ危機

2006年11月号

ジョン・L・ソーントン ブルッキングス研究所理事長

かつては官僚ポストを独占していたエリート大学の卒業生の多くが、いまでは民間の雇用へと流れつつある。経済開放政策の結果、新たに民間に魅力的な雇用がつくりだされたことで、皮肉にも、この30年に及ぶ改革路線を今後踏襲していけるような、若くて優秀な人材を中国政府は確保しにくくなっているのが現状だ。現在の硬直的なトップダウン型の政治構造にばかり依存し続けるのは、もう無理な段階にきている。共産党は、多くの優れた人材を持つ民間と政府の間に存在する壁を取り払うべきだろう。政治指導者のポストを民間の優れた人材に開放すれば、政治力学と行政効率のせめぎ合いに頭を悩ます現在の指導層のジレンマを解決する助けにもなる。

国際経済・貿易の不公正をいかに是正するか
―純然たる自由貿易では問題は解決しない

2006年11月号

ロバート・H・ウェイド
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス政治経済学教授

現在の自由貿易体制では、世界を勝ち組と負け組の二つに分けてしまうし、多くの途上国は負け組になる。だが、グローバル経済に対する市場開放の度合いを途上国が調整できるようにすれば、こうした二極化現象をなくせる可能性がある。こうした問題を前向きに考えていくには、「先進世界」対「途上世界」という構図ではなく、先進国の人口が10億人、先進国より高い経済成長を遂げている途上国の人口が30億人、そして低成長に苦しむ途上国の人口が20億人であるという事実に即して、「1対3対2の世界」という構図で世界の経済と貿易の問題、そして途上国のニーズをとらえるべきではないか。

グローバルに統合された企業

2006年8月号

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年7月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イラン VS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

イランの国内政治力学と核問題
―― テヘランは何を警戒し、何を望んでいるのか

2006年7月号

レイ・タキー 米外交問題評議会(CFR)中東担当シニア・フェロー

イランの「戦争世代」強硬派の代表的人物であるアフマディネジャド大統領の世界観は、イスラム主義のイデオロギー、ナショナリズム、国際秩序への不信感で成り立っている。「戦争世代」は、アメリカとの紛争は避けられないとみており、アメリカを抑止するには、戦略兵器を保有するしかないとみている。一方、「インド・モデル」に注目する「現実主義者」たちは、国際社会とグローバル経済への統合を果たすには、核開発に対する制約も受け入れざるを得ないと考え、核拡散防止条約(NPT)の許す範囲内で開発を進めることを求めている。必要なのは、「イランとアメリカが心配する懸案のすべてを網羅するような交渉」において、両国が合意できる部分を増やしていくことではないか。核問題を、より広範なアメリカとイランの関係における病の症状の一つとみなし、根本の病を治していくような路線が必要だ。イランの核問題を解決できるとすれば、アメリカとイランの全般的関係が大きく改善した場合だけであることを認識する必要がある。邦訳文は、米外交問題評議会(CFR)のレイ・タキーが、米上院の「連邦金融管理・政府情報及び国際安全保障に関する小委員会」に、7月20日に提出したイラン問題に関する書簡証言。

インド経済モデルの誕生か
――成功の検証と今後の課題

2006年7月号

グーチャラン・ダス
P&G・インド前最高経営責任者

インドの経済的台頭をめぐって特筆すべきは、東アジア諸国のように労働集約型の安価な商品を欧米市場に輸出して経済発展を遂げたのではなく、輸出よりも国内市場を、投資よりも消費を、工業よりもサービス業を、非熟練型の製造業よりもハイテク産業を重視して成長を達成していることだ。だがインドの規制緩和、経済改革はまだ完遂されていないし、教育、医療、水資源をめぐる適切な公共サービスさえ確立されていない。すべてのインド人がすぐれた学校、まともな医療施設、清浄な飲料水へのアクセスを持って初めて、偉大な国家への仲間入りができる。経済成長の黄金時代が続くと当然視してはならない。改革を続け、民間経済のペースについていけるように統治を改善していかなければ、非常に大きなチャンスを逃すことになる。

核の優位を確立したアメリカ
―― 核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー ノー トルダム大学政治学助教授、 ダリル・G・プレス ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーショ ンでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

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