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経済発展を促進し、環境を保護するとともに、社会正義を実現するという三つの目標は矛盾するものではなく、相互補完的な関係にあるとした「持続可能な開発」の概念はいまや陳腐化してしまった。人権保護団体、環境保護団体、原子力発電企業が、これを、自分たちに都合のよい概念につくり変えただけでなく、国連の場で実現不可能な普遍的アジェンダとされてしまったからだ。持続可能な開発の概念を生き返らせるためには、普遍的アジェンダを掲げるのではなく、優先順位の設定と実施に関する意思決定を各地域の主体に委ねるべきだ。地域の必要性と利益がそれぞれに異なる以上、持続可能な開発を実践する場合は、必ずボトムアップ型のアプローチによる目標の再設定を繰り返していく必要がある。