1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

働き口とよりよい生活を求めて、数多くのアフリカの人々が、危険を顧みずに、ヨーロッパを目指して地中海の旅へと繰り出している。アフリカからの移民・難民が殺到しているヨーロッパ諸国は、経済移民および政治・経済難民の受け入れ制度を改革し、域内で調和させる必要性に直面しつつあり、欧州連合(EU)も、これを経済、人道上の緊急課題と捉えだしている。だが、ヨーロッパ各国がこの問題をめぐって、立場を共有しているわけではない。殺到するアフリカからの難民に特に悩まされているのが、地中海沿岸に位置する南ヨーロッパ諸国だ。一方、移民、難民の増大に悩まされる一方で、ヨーロッパ社会の高齢化が進み、出生率が低下するなか、EUは、近い将来に労働力不足に陥ると考えられている。つまり、そこには、アイデンティティーを脅かすアウトサイダーとしての移民、貴重な労働力としての移民という認識上のジレンマがあるだけでなく、その受け入れをめぐって加盟国間に立場の違いがある。

クラシック・セレクション
CFRミーティング
ヒラリー・クリントンが語る
世界を混乱に陥れたブッシュ外交

2007年6月号

スピーカー
ヒラリー・クリントン 米上院議員
司会
ピーター・G・ピーターソン 米外交問題評議会(CFR)理事長

――2000年11月7日、ヒラリー・クリントンは米国史上初めて、ファーストレディーを経験した上院議員になり、2004年には、米統合軍変革に関する国防総省諮問委員会のメンバーに選ばれた唯一の上院議員となりました。現在、ニューヨーク州選出の上院議員としては史上初めて上院軍事委員会のメンバーも務めています。彼女は上院議員として、イラク、アフガニスタン、クウェートをそれぞれ2度にわたって事実調査のために訪問し、この他にも、数多くの国を視察しています。ご存じのとおり、自伝である『リビング・ヒストリー』をはじめ、数多くのベストセラーも送り出しています。

経済ブームに沸き返り、軍事支出を拡大し、依然として台湾との緊張した関係を続ける中国に対して、民主・共和両党の候補たちは、いずれも警戒感を持っている。巨大な規模の米財務省証券を中国が抱え込んでいることにも、アメリカが中国との貿易によって大きな赤字を抱え込んでいることにも、大統領候補の多くは危機感を抱いているようだ。一方、北朝鮮については、民主党系候補の多くが平壌との直接交渉を求め、共和党系候補は中国がもっと平壌に大きな圧力をかけることを期待している。現実には、ヒル国務次官補が6月下旬に平壌を訪問したことで、ブッシュ政権は、主に民主党系の候補が求めていた直接交渉路線を取り込んだことになる。報道によると、アメリカ政府は、米国、中国、韓国、北朝鮮の4カ国をメンバーとする、朝鮮半島の恒久的和平を目指す機構の創設を検討するよう求めるとともに、6者協議のすべてのメンバーが参加する「北東アジア安全保障対話フォーラム」の構築も提案している。東アジアにおける安保新枠組みというテーマは、本号掲載の「ジャパン・アップデート」(45ページ)でも議論されている。

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

CFRインタビュー
ガザは孤立しても、ハマスは封じ込められない
 ――二極化するパレスチナ

2007年6月号

アンソニー・コーデスマン 戦略問題国際研究所 戦略問題担当議長

先月号に掲載した「パレスチナ危機のなか、なぜ中東和平への機運が高まっているのか」でマーチン・インディクは、「国際社会の支援をバックにファタハが治安部門の強化を図っていることに危機感を募らせたハマスは、ファタハが力をつける前に粉砕しておく必要があると判断し、その結果、パレスチナは内戦状況に陥った」と分析した。インディクの予想通り、いまやファタハはガザ地区への影響力を失い、「西岸はファタハが、ガザ地区はハマスが支配する」という分断状況に陥っている。戦略国際問題研究所(CSIS)の中東問題の専門家であるアンソニー・コーデスマンは、ファタハによる統治がこれまで腐敗し、効率に欠けていたことを思えば、ハマスをガザに封じ込められるとは考えにくいと指摘し、今後、ハマスが力を得ていく可能性を示唆する。西岸(ファタハ、自治政府)とイスラエルの協調が進む可能性はあるとしても、パレスチナの二極化は当面続き、これが「イスラエル、アメリカ、西岸」と「イラン、シリア、ヒズボラ」の国際的対立として、広がりをみせていく危険もある。コーデスマンは二極化によって「パレスチナで大規模な紛争が起きるとは考えにくいが、パキスタンからアルジェリアにいたる一連の地域がますます不安定化する危険がある」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

アメリカ政府は人民元は不当に過小評価されており、その結果、中国製品の競争力がますます強化され、グローバル貿易に大きなねじれが生じ、欧米諸国、特にアメリカの貿易収支に(巨額の貿易赤字として)大きなしわ寄せが来ているとみている。ヘンリー・ポールソン米財務長官は最近の米外交問題評議会(CFR)インタビューで次のように語っている。「中国の人民元のレートは中国経済の実態を反映していないし、すでにグローバルな金融システムの主要な一部を担いつつある中国が、経済の実態を反映しないような通貨を持っていることは大いに問題がある。短期的には、われわれは、より大きな柔軟性(変動幅)を導入するように求めていく。中国は人民元の為替レートを切り上げる必要がある」。しかし、人民元レートをいじった程度では、アメリカの巨大な貿易赤字は減少しないし、中国における政治的反動を誘発する恐れがあると指摘する専門家もいる。

中国のスペース・オデッセイ
――衛星破壊実験と北京の政策決定

2007年6月号

ベーツ・ジル 戦略国際問題研究所(CSIS)中国研究員
マーチン・クレイバー CSISリサーチ・アナリスト

「平和的台頭」を心がけて「責任ある行動をとり」、「調和のとれた世界」を模索する国家としてイメージ創りにあれだけ腐心してきた北京が、なぜ衛星攻撃兵器(ASAT)実験という挑発的行動に出たのか。その意図については、アメリカの宇宙空間での軍事的優位を牽制するため、あるいは、宇宙空間への兵器配備禁止の誘い水とするためなど、さまざまな憶測が流れている。だが、実際には、中国の外交・安全保障担当省庁と協議せずに、人民解放軍が独断で実験を強行した可能性が高い。とすれば、中国の軍事的意図、現在宇宙空間の軌道を漂泊している破片や残骸という問題を別にしても、ASAT実験は、より厄介な問題を浮上させていることになる。それは、政策決定プロセスが不透明な中国を信頼できるパートナーとみなせるかどうかという戦略問題にほかならない。

「2050年までに温室効果ガス排出量を少なくとも半減させることを含む、欧州連合(EU)、カナダ及び日本の決定を真剣に検討する」という最終文書を発表した地球温暖化をテーマとするハイリゲンダム・サミットは一定の成果を上げたと考えられている。だが、本当にそうだろうか。EUや日本と、アメリカの立場には依然として大きな開きがあるし、途上世界における「主要排出国」である中国とインドは、独自の対策は講じるとしても、成長を抑え込むようないかなる多国間排出削減目標にもコミットしないという立場を崩していない。さらに、「持続可能な発展」という文脈からみれば、途上国の貧困対策を押しつぶす形で、「先進国のアジェンダである環境保護政策」を優先すべき理由はないと批判する専門家もいる。排出量削減の数値目標というトップダウン方式を維持していくのか、それとも、普遍的な数値目標を追求するのはやめて、地域に即したボトムアップ方式のアプローチをとるべきなのか。バランスのとれた温暖化対策をとるために克服すべきハードルは数多く残されている。

アルカイダ・ストライクスバック

2007年6月号

ブルース・リーデル ブルッキングス研究所 セバン中東研究センターシニア・フェロー

現在のアルカイダは、パキスタンに非常にすぐれたプロパガンダチームを擁し、グローバルな活動能力を持つテロネットワークである。二次的な独立拠点をイラクに持ち、ヨーロッパへの影響力も強めている。指導層はほぼ手つかずのままで存続している。指揮統制系統を分散化し、意見決定を下位委譲しているために、ザルカウィのような主要なプレーヤーが死亡しても、生き残り、活動を継続できる。同盟勢力であるタリバーンもアフガニスタンで再び影響力を強めている。一方、混沌とした状況をつくりだしてしまったアメリカのイラク占領はビンラディンの計画を先に進めるのに手を貸してしまっている。ビンラディンはかねて、「イラク」をアメリカを陥れる罠にしようと試みてきたが、いまや戦略を拡大し、アメリカとイランを戦争へと向かわせようと画策しているようだ。

この数年来、アメリカとロシアは、事あるごとに衝突してきた。最近も、チェコとポーランドにミサイル防衛網を配備しようとするワシントンの計画に、ロシアは激しく反発した。プーチン大統領は4月末の年次教書演説でも、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を批判した上で、欧州通常戦力(CFE)条約の履行義務を停止すると表明し、イワノフ第一副首相も5月3日に、ロシア軍は今後、「部隊の移動をNATOに通報しない」と発言した。だが、CFE条約の凍結を含むプーチンの攻撃的路線は、全般的な米ロ関係の悪化という問題が引き起こした現象にすぎず、CFE条約そのものが問題ではないとする見方もある。「米ロ関係が緊張しているのは、原油価格の高騰と経済成長をバックに、ロシアが主要な地政学的プレイヤーとしての地位を取り戻しつつあること、プーチン政権が、ロシアが弱体化していた時期に弱者の立場から結んだ条約や契約を改訂するか、反故にしていく戦略をとっていることに関係がある」とみる専門家は多い。

Page Top