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テーマに関する論文

CFRインタビュー
イランの安全を保証して、核問題の外交解決を目指せ

2007年3月号

ロバート・ハンター
ランド研究所上席顧問

ワシントンの対イラン強硬派は、軍事攻撃路線は断念しつつあるが、永続的な封じ込めを求めて、交渉路線を阻止しようとしている。ブッシュ政権内にイランとの交渉に前向きな勢力とこうした強硬派との対立があると指摘する中東問題の専門家ロバート・ハンターは、「交渉を開始する前に、イランにウラン濃縮を停止するように求めているようでは、イランが交渉に応じるはずはない」と指摘する。イランとの交渉が成立するかどうかは、われわれが北朝鮮同様に、イランに対しても、「行動を自重し、核開発計画をすべて公開し、テロ支援も行っていないことが確認できれば、われわれは貴国の安全を保証しよう」と言えるかどうかに左右されると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
地域外交を展開しだした
サウジの思惑は何か

2007年3月号

グレゴリー・ゴース
バーモント大学政治学助教授

中東におけるイランの影響力拡大を警戒するサウジアラビアは、スンニ派国家との連帯を強めつつも、テヘランと交渉できる領域は交渉して、なんとかイランの影響力の拡大を枠にはめたいと考えている。この観点からレバノンやパレスチナでの影響力拡大を模索するサウジの試みは、それなりに成功しつつある。サウジ・中東政治の専門家グレゴリー・ゴースは、レバノン、パレスチナでの各勢力間の仲介役を担うことで、イランの影響力を抑え込もうとしたサウジは、いまや「パレスチナ新政権のゴッドファーザー」となったと言う。一方、イラク情勢をめぐって「サウジはジレンマに直面している」とみる同氏は、「彼らはイラクでシーア派とイランの影響力が高まっていることを警戒しているが、主要な安全保障パートナーであるアメリカとの関係を損なうことを恐れて、イラクのスンニ派を積極的に支援しているわけではない」と語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
アフガニスタンの統治能力整備への支援を

2007年3月号

サイード・ジャワード
駐米アフガニスタン大使

「アフガニスタンでの治安面での問題はテロによってつくりだされている。しかし、これは、テロリストやタリバーンがアフガニスタンで大きな力を持っていることを意味しない。むしろ、アフガニスタン政府が行政サービスを提供したり、市民を保護したりする能力に限界があることが問題だ」。アフガニスタンの日常生活を脅かしているのは、テロリストの攻勢だけでなく、援助不足ゆえにアフガニスタン政府がうまく統治能力を確立できないことにあるとサイード・ジャワード駐米アフガニスタン大使は強調する。「民衆の必要を満たせるようにカブールの行政、統治能力を改善しないことには、軍事作戦だけでは状況の改善は見込めない」。ジャワードは、「われわれは、アメリカそして国際社会が、テロリスト勢力を壊滅した後のアフガニスタンが国家として持ちこたえられるように統治能力の整備に投資することを望んでいる」と指摘し、「アフガニスタンで平和を勝ち取らない限り、対テロ戦争はうまくいかない」と語った。聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgの副編集長)。

2007年2月、ダイムラークライスラーは、クライスラーの北米部門の売却も視野に入れた再建策、リストラクチャリングを実施していくつもりだと発表し、その一環として、1万3千人のレイオフを行い、生産能力を削減し、さらには、クライスラーの売却も検討していることを挙げた。2月の表明は、9年に及んだダイムラーベンツとクライスラーの不幸な結婚の終わりの始まりとみる専門家は多い。ゼネラル・モーターズ(GM)がクライスラー、あるいはその一部を買収するかもしれないという噂もあれば、そうした噂はたんなる憶測にすぎないという見方もある。クライスラーにどのような運命が待ち受けていようと、ダイムラークライスラーの窮状は、グローバル・オート・インダストリー(世界の自動車産業)の大きな変化を映し出している。デトロイトの自動車メーカーが悪戦苦闘するなか、日本のトヨタが市場への影響力をますます高めているからだ。中国の一部の自動車メーカーもパーツ部門を中心にグローバル市場での足場を強化しつつある。

グローバル化に対する 反動にどう対処する

2007年3月号

ラウイ・アブデラル ハーバード大学ビジネススクール助教授
アダム・シーガル 米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

いまや、資本、商品、労働力の国境を超えた自由な移動を意味するグローバル化の流れが今後も続いていくと楽観できる状況ではなくなってきた。最大の懸念材料は、市民のグローバル化への猜疑心が高まり、グローバル化が国家間、国内の双方で格差を助長していることへの人々の不満が増大し、状況への反発として各国で保護主義が台頭しつつあることだ。技術革新領域についてはグローバル化の流れがよどむことは今後もあり得ないが、ドーハ・ラウンドの決裂からも明らかなように市場開放の流れはよどみ始めているし、2国間合意の増大によって国際的な貿易ルールも損なわれ、グローバル化を支える制度そのものが形骸化しつつある。各国が状況にどのように対応するかで、グローバル化の今後は左右される。

復活した日本と現実主義外交の伝統

2007年3月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長

日本の最大の強みは、国力を構成する軍事、経済、文化その他の要因を時代に即してうまく再定義してきたことにあり、小泉政権以降の日本政府は、アジアにおける主要なプレーヤーとしての地位を維持していこうと、新たな国力構成領域での強さを培いつつある。若手政治家たちは、日米同盟が両国にとってもっとうまく機能するようになることを願っており、より多くの役割を引き受け、その代わりにより多くを求めることについても躊躇しない。こうした状況にある以上、ワシントンが東京を犠牲にする形で北京との和解路線をとれば、東京は自主路線の度合いを高め、その結果、アジアの安全保障環境はますます不透明になる。ワシントンが中国との緊密な経済的絆に加えて、安定した戦略関係を築くことについて日本を過度に刺激しないようにするには、あくまでも東京との同盟関係を基盤に中国への関与策を進める必要がある。

Classic Selection
核の優位を確立したアメリカ
――核抑止時代の終わりか

2007年2月号

ケイル・A・リーバー  ノートルダム大学政治学助教授 、 ダリル・G・プレス  ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

2006年7月、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドは再開の目処が立たぬままに凍結され、もはや今回のドーハ・ラウンドが目的に掲げた、踏み込んだ貿易自由化は永遠に陳腐化したとする見方もあった。しかし、ダボスで2007年1月に開かれた世界経済フォーラムに集った30カ国の閣僚たちは、数カ月以内に交渉を再開することに合意し、2月9日には、農業自由化交渉が再開された。だが、交渉の今後を楽観できる情勢にはない。ドーハが失敗に終われば、貿易自由化の進展が望めなくなるだけでなく、グローバル化は停滞し、世界は保護主義の時代に突入する危険もある。無論、WTOの力は損なわれ、富裕国市場へのアクセスを求める貧困国の願いも絶たれることになる。とはいえ、これまでのすべての貿易ラウンドも膠着状態を経て、土壇場で合意形成にいたっていることも事実だ。今後を考えるうえでの懸念材料は、保護主義が高まりをみせるなか、各国が「多角的貿易ラウンドに代わる選択肢として」2国間貿易合意路線へと傾斜しつつあることだ。

テロリストはインターネットを いかに利用しているか  
――オンラインテロの脅威と対策

2007年2月号

エヴァン・F・コールマン
グローバル・テロアラート・コム運営者

テロリストによるデジタル版パールハーバーを警戒する各国政府は、仮想空間上の「ドアを閉める」作戦を展開しているが、欧米のコンピューターシステムに対する直接的なサイバーテロの危険はそれほど大きくない。テロ組織も、普通の組織と同じようにインターネットを利用しているだけで、テロ組織によるネット利用が脅威なのは、ひとえに彼らの意図と目的の部分にある。アルカイダやこれに準じたテロ組織は、インターネットを利用してテロ要員のリクルートを行い、資金提供者に接触し、世論に訴えかけ、テロ決行者へ指令を伝え、戦術や知識を蓄えては拡散し、テロ攻撃を組織化している。これらをすべて取り締まるのは事実上、不可能である以上、むしろ、それらのウェブサイトやフォーラムを好きにさせて、テロリストのイデオロギーや動機を理解するうえでの重要な洞察をもたらしてくれる貴重な情報源とすべきではないか。

CFRブリーフィング
米ロは衝突コースにあるのか?

2007年2月号

Lionel Beehner (Staff Writer, www.cfr.org)

プーチン大統領率いるロシアとアメリカは、これまでも協調と対立を繰り返す微妙な関係にあったが、ここにきて、双方は相手を明確に批判するようになった。アメリカの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの離脱、北大西洋条約機構(NATO)の拡大、かつてロシアの勢力圏だった旧ソビエト諸国における民主化運動への欧米の支援などをめぐって、米ロはこれまでもことあるごとに対立してきたが、それでも大きな対立局面にいたることはなかった。だが、プーチンは、最近ドイツのミュンヘンで開かれた国際安全保障をめぐる国際会議で、「アメリカは単極世界の構築を試み、核の軍拡レースを復活させ、国際的紛争の解決に無節操に武力を用いている」とワシントンを痛烈に批判し、これに対してロバート・ゲーツ国防長官は、「ロシアの批判を聞くと、まるでわれわれが冷戦時代にあるかのような錯覚に陥る」とコメントしている。米ロはこのまま衝突コースを歩み、世界は再び米ロの対立を軸に切り分けられることになるのか。それとも……。

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