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テーマに関する論文

CFRインタビュー
なぜパキスタンは タリバーン対策に
乗り気ではないか

2007年4月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

アフガニスタンとの国境地帯にあるパキスタンの部族地域は、いまやタリバーンやアルカイダの聖域とされている。イスラム過激派は、この部族地域を拠点にアフガニスタンへの攻撃を繰り返しており、アフガニスタンだけでなく、アメリカも部族地域をうまく管理できないパキスタンに対する不満を高めつつある。一度は国軍を部族地域に投入したパキスタンだが、現地での駐留が長引くにつれて、部族地域の住民の反発を買うようになったため、「政府の代理人と部族長の交渉」という従来の路線に戻る一方で、「部族地域の治安部隊を強化して、こうした部隊がテロリストや民兵を取り締まることを期待している」。だが、「地方に配備されているパキスタンの治安部隊は装備も貧弱で、自動小銃で武装したアルカイダがジープで走り去るのを、50年前の銃を抱えて見逃すしかない状況だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
北朝鮮との外交交渉の行方

2007年4月号

ドン・オーバードーファー
ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 朝鮮研究所理事長

「私は北朝鮮の核実験は(外交交渉へと流れを向かわせる)ある種の『触媒』の役目を果たしたと考えている」。実験後の状況が危険な対立状況、武力衝突の危険によって支配されたわけではなく、アメリカ、アジア諸国、そして世界の関係国は比較的冷静な対応をみせた。実際、核実験後には、北朝鮮と各国の対立よりも、むしろ、外交路線が活性化した。核実験から6者協議での北朝鮮との合意へと向かった流れをこう描写するオーバードーファーは、「アメリカとの外交関係の正常化が実現するのなら、北朝鮮は核開発計画を部分的、あるいはすべて解体することにも否定的ではない」としながらも、「行く手には大きな困難が待ち受けている」と指摘し、「どちらが先に行動を起こすか」「どのような手順を踏んで合意を履行していくかをめぐって暗雲が立ち込めだしている」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
ロシアは天然ガス版 OPECの形成を試みているのか

2007年4月号

フィリップ・K・バレジャー PKバレジャーLLC社長

石油や天然ガスを含む資源へのクレムリンのアプローチは一貫している。それは、「資源から最大限の利益を引き出すという重商主義路線」にほかならない。ロシアが天然ガス版のカルテルを短期的に組織することはあり得ないとしても、長期的に考えると天然ガス輸出のカルテルが形成される可能性は高い。状況をこう分析するエネルギー問題の専門家、フィリップ・バレジャーは、「中国への輸出インフラ、ヨーロッパへのさらなる輸出インフラを整備すれば、気に入らない国には供給を止めるなどの資源戦術をロシアはとれるようになる」と指摘する。ヨーロッパにとって、ロシアに代わる供給源はイランしかないが、これは政治的に魅力的な選択肢とはなり得ないとみる同氏は、ヨーロッパが政治的リスクを減らすには、(ロシア、イランの天然ガスを)トルコ経由のパイプライン供給に頼るしかないが、このやり方も、トルコの欧州連合(EU)加盟問題に絡んでくるので、不安定化のリスクを抱えることになると示唆した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

トルコとイラク北部のクルド人との対立がここにきて再燃しており、イラク北部とトルコの国境地帯で紛争が起きる危険が指摘されている。問題は、トルコからの分離独立を求めるクルド労働者党(PKK)の武装勢力が、イラク北部を聖域にトルコへの攻撃を行っていることに派生している。最近ではトルコ軍の高官は、「イラク北部におけるPKKの反乱勢力を一掃するためなら、イラク北部への軍事侵攻も辞さない」と発言している。この他にもアンカラは、イラクのクルド人がイラクからの独立を試みれば、トルコ国内のクルド人分離独立運動を大きく刺激することになると懸念している。そして、これら一連の流れの鍵を握るのが、イラクの石油都市キルクークの帰属問題だ。キルクークの帰属を問う住民投票が、2007年末に予定されているが、すでに、トルコとスンニ派アラブ国家は住民投票の実施に反対し、一方、イラクのクルド人勢力は、投票が実施されなければ、イラクからの独立も辞さない可能性も示唆している。クルド人地域がキルクークとともにイラクから独立すれば、イラン、イラク、トルコ、シリア、アルメニアに広がる広大なクルディスタン地方のクルド人がどう反応するか。悪くすれば、中東はこれまでとは全く別次元の大きな問題に直面する恐れがある。

CFRミーティング
アーノルド・シュワルツェネッガーが語る
環境保護と経済成長

2007年4月号

アーノルド・シュワルツェネッガー
カリフォルニア州知事

これまで長い間、環境保護運動は、「環境を汚染しているのはわれわれ人類だ」という罪悪感によって突き動かされてきたが、いかなる運動であれ、それを成功させるのは人々の熱意であって、罪悪感ではない。「必要なのは熱意と確信、そして健全な危機意識だ」と指摘するシュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事は、環境保護運動が市民への苦情や批判としてではなく、生活を明るくする前向きの活動とみなされるようになれば、大きな転換点を超えられると強調する。政府が環境に配慮した基準や規制を導入することで、市場での技術革新を促すことができることを立証したカリフォルニア州は、「環境経済」の枠内で、「環境か経済かのどちらかを選ぶのではなく、双方を両立させられること、つまり、環境を守り、経済を成長させられることを立証している」。カリフォルニア州はこの点で前向きなメッセージを世界に発しているとシュワルツェネッガーは語る。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

アメリカが対テロ戦争に気を奪われるなか、中国は経済発展による経済的影響力だけでなく、上海協力機構(SCO)などを通じた政治的影響力も拡大させている。しかも、6者協議に北朝鮮を連れ戻して、合意に持ち込んだことで、中国の政治・経済的台頭はいまや現実の東アジア秩序に影響を与えつつある。ワシントンでは、日米関係の強化を軸にアジアの民主国家連合構想が浮上しているが、アジアで孤立している日本と手を組むことが賢明なのか、疑問を表明する専門家もいる。しかも、日本が重視する拉致問題への路線をめぐって、日米間にさざ波が立ち始めている部分もある。日米中の勢力均衡を模索しつつ、多国間同盟関係の構築を唱える専門家も出てきている。それがいかなるものであれ、「今後の東アジアでの枠組みは、豊かながらも、おそらくは非民主的な中国という現実に直面していかなければならない」とみる専門家は多い。

ヘッジファンド悪玉説は間違っている

2007年3月号

セバスチャン・マラビー ワシントン・ポスト紙コラムニスト

ある企業や通貨の価格が本来の価値を示していないことを見抜き、さまざまな金融資産の価格の間に論理的には説明できない矛盾があることを突き止める能力を持っているヘッジファンドのアナリストだけが成功を収める。そのような大成功を収めるアナリストは、彼らだけではなく、投資家にも莫大な利益をもたらす。割安となっている資産を買い、割高となっている資産を売ることによって、市場価格の歪みが消失するまで彼らは市場価格を変動させ続ける。こうして最終的には世界の資本の効率的な分配が実現されることになる。ヘッジファンドが生み出すリスクとその活動がリスクを減少させることをバランスよくとらえる必要があるし、ヘッジファンドを金融システムに対する危険な火種とみなすのではなく、金融システムが火に包まれないように配慮する消防士の役割を果たしていると考えるほうが実態に近い。

インフルエンザ・パンデミックへの備えはできているか

2007年4月

マイケル・T・オスタホルム/ミネソタ大学感染症研究政策センター所長

いまや、H5N1ウイルスが、遺伝子の再集合プロセスを経ずに独自に変異を繰り返すことで、人から人への感染力を持つようになる可能性も浮上してきている。いつ次なるパンデミックが起き、それがどれほど重大な事態を引き起こすかを予見するのは不可能だが、それは間違いなく起きるし、緊密な相互依存を特徴とするグローバル経済のなかでパンデミックが起きれば、相互依存関係は引き裂かれ、これまでのパンデミック以上の甚大な被害を引き起こすことになる。これまで大規模な人への感染が起きていないとしても、このままパンデミックへの備えが進まなければ、最終的に世界は最悪の事態に直面することになる。

Classic Selection 2007
グローバル化する大学

2007年4月号

ウィリアム・R・ブロディ ジョンズ・ホプキンス大学学長

ボーイングやIBM、インテル、マイクロソフトがそれぞれの産業で世界市場を席巻してきたように、高等教育の分野でも、一握りのグローバルプレーヤー、つまり教育分野における圧倒的強者が現れ、市場を制するようになり、21世紀は、「グローバル大学」の時代になるのだろうか。世界の学界から選りすぐりの教授陣と学生を集め、インターネットでつなぐ巨大研究教育機関としてのグローバル大学が出現するのか。しかし、「中国には20年前から、イタリアには50年以上も前から分校を持つアメリカの大学の学長である私に言わせれば、国際的な教育市場においてアメリカの圧倒的優位を不動のものにするのは、それほど簡単でもなければ、現実味があるわけでもない」。

グローバルな公衆衛生の課題(下)
――潤沢な援助がつくりだす新たな問題

2007年3月号

ローリー・ギャレット
米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

途上国の公衆衛生状況の改善を願いつつも、先進国政府や民間のドナー(資金提供者)は、HIV・AIDSなど、自分たちの関心の高い疾病の管理を求めて、具体的な対策上の数値目標を満たすことを途上国支援の条件にしている。だが、こうした特定の疾患をめぐる数値目標を満たそうと、小児科医や産婦人科医など、他の領域の医療スタッフが動員されているとすれば、先進国による援助は途上国の公衆衛生問題を緩和するどころか、さらに深刻な問題をつくりだす危険がある。むしろ、先進国は、出産時の女性の死亡率を低下させ、平均寿命を高めるという、二つの基本目標を掲げ、その実現に向けて努力していく必要がある。その理由は、安全な出産と平均寿命という二つの指標が向上するとすれば、その他の公衆衛生問題も改善されていることを意味するからだ。この二つの指標に改善がみられなければ、援助によって特定の疾病対策に成功しても、相手国の市民の健康と公衆衛生への貢献はごくわずかなものになってしまう。

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