CFRブリーフィング
パキスタンの現状と変革の可能性を検証する
2007年11月号

パキスタン軍部とその情報機関である軍統合情報部(ISI)は、クーデター、武装勢力への支援、近隣国の内政への介入などを通じて、建国以来、一貫してこの国の政策決定の中枢を担ってきた。だが、これまでイスラム武装勢力を外交ツールとして利用してきた軍とISIも、こうした武装勢力を抑え込まない限り、地域的な混乱と不安定化をめぐって国際的にますます批判されかねない状況へと追い込まれている。こうしたなか、軍の支配構図も少しずつ変化しだしているし、ムシャラフの軍参謀長辞任によって、さらに流れが変わる可能性もある。また、チョードリ判事解任の顛末からも明らかなように、裁判所も政治からの独立性をいまや主張するようになった。だが、最大の変化はメディアが力をつけてきていることだ。「すでにニュース情報が、この国の民主化運動のバックボーンを提供している」とみる専門家もいる。また、2003年以降、パキスタン経済は年平均で6・5%の成長を遂げており、こうした経済の拡大もパキスタンにおける政治制度の移行を促すことになるかもしれない。とはいえ、軍の影響力は依然として大きいし、政党も分裂している。来年早々に予定されている議会選挙でこれらの社会変数の何がどう変わるか、パキスタンの政治体制の移行が実現するかどうかが大いに注目されている。