1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

Review Essay
経済にいかに介入すべきか、それが問題だ
――大恐慌とニューディールの真の教訓とは

2007年12月号

チャールズ・W・カロミリス/コロンビア大学ビジネススクール教授

ニューディールが大恐慌から経済を立ち直らせたと考えるのは間違っている。それどころか、「政策の失敗、とりわけ、どのような政策が採られるかが予想不能だったことが、経済の不確実性を増幅させ、企業と消費者の投資と消費を抑制する結果となった」。大恐慌を長期化させた理由の一つは、1930年代に受け入れられ始めた経済への政府介入を肯定的にとらえる新たなイデオロギー志向だった。それは、経済を計画し、形作ることを目的とする(政府介入型の)政策実験を行っても、ダメージは軽微なものにとどまり、むしろ大きな可能性を期待できるというイデオロギーにほかならない。こうしたイデオロギーゆえに、政府の経済介入策が、特に一貫性に欠け、予測不能なやり方で実施される場合、経済に大きなダメージを与え得ることが見えなくなり、うまく機能している市場が経済的問題に自律的に対応していくメカニズムを備えていることが軽視されてしまった。

Classic Selection
それでも21世紀は民主主義の時代になる
――民主化に不可欠な信頼と妥協を育む市場経済

2007年12月号

マイケル・マンデルバーム   ジョンズ・ホプキンス大学教授

市場経済を機能させるのに必要な制度、知識、価値観は、民主主義を実現するうえで必要になる制度、知識、価値観と重なりあう。こうして民主主義は市場の働きを通じて広まることになる。市場経済が民主主義を育んでいくのは、市場経済の前提となる財産権の保障が自由の一部を構成しているからだ。もっとも重要なのは、市場経済のもとで、企業、労働組合、専門家協会、有志クラブなど、政府から独立した団体が多数誕生することだ。非民主国家が経済成長を実現するために市場経済体制を導入すれば、民主化圧力は必ず高まっていくし、経済成長は、将来にわたってあらゆる国の政府が追求する目標であり続ける。しかし、アメリカの政策でそれを左右するのは難しいし、アラブ世界、ロシア、中国が今後民主化していくかどうかは、予断を許さない状態にある。

中東の外交プレーヤー
としてのトルコに注目せよ
 ――クルド人問題と中東秩序の再編

2007年11月号

F・スティーブン・ララビ ランド研究所ヨーロッパ安全保障問題担当議長

トルコはいまや中東における重要な外交プレーヤーとして台頭している。イランやシリアとの関係を修復し、パレスチナにも前向きなアプローチをとるようになり、広くアラブ世界との関係強化を試みている。こうした状況を前に、ワシントンには、トルコの外交政策が「イスラム化」していくのではないかと懸念する者もいる。だが、トルコが中東に積極的に関与し始めたのは、冷戦終結以降、トルコが外交路線を多様化させていることの結果である。現実には、トルコは、歴史的に自らがその一部だった地域を再発見しつつある。イラクのクルド地方政府とトルコの対立をどう解決して、イラクを安定化させ、トルコを中東への貴重な懸け橋の役目を果たしてくれるようにするか。ワシントンは、独立路線と自己主張を強めるトルコに圧力をかけるのではなく、そのようなトルコにうまく向きあっていくことを学んでいく必要がある。

CFRインタビュー
アフリカにおけるHIV対策の落とし穴
 ――研究と臨床を同時進行せざるを得ない

2007年11月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニア・フェロー (グローバル公衆衛生担当)

「HIV対策をめぐっては、何かを試み、残念な教訓が積み上げられるという状況が続いている」。エイズ対策が難しいのは、多くの人々がHIVに感染するのを防ぐための科学的データを得るためには、研究と臨床を同時に進めていかざるを得ないことにあり、時に、そうした措置が全く効果がなかったり、別の深刻な問題を引き起こしたりすることもある。事実、アフリカの多くの人々が、「自分たちはモルモットにされている」と憤慨している。聞き手は、トニー・ジョンソン(www.cfr.orgのスタッフライター)。

論争 トウモロコシは食糧か燃料か

2007年11月号

トム・ダシュル前米上院議員
C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学・法学教授
ベンジャミン・セナウアー ミネソタ大学応用経済学教授

フォーリン・アフェアーズ日本語版2007年5月号の「エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか」で、C・フォード・ランゲとベンジャミン・セナウアーは、原油価格が高騰するなか、世界的に代替燃料として注目を集めているエタノールも、トウモロコシや大豆を原料として生産する限り、食糧としての供給が奪われることになり、世界の穀物供給を連鎖的に逼迫させ、主要産品の価格を高騰させると警告した。「トウモロコシや大豆を原料とするバイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく」と指摘した両氏は、「エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、トウモロコシや大豆ではなく、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない」と論文で結論づけている。以下は、トウモロコシからのエタノール生産を推進する立場から、2人の論文への反論を寄せた前米上院議員のトム・ダシュルの議論と、それに対するランゲ、セナウアー両氏の再反論。

中国の富裕層の上位10%が民間資産の40%以上を保有し、インドにいたっては、富裕層の上位わずか36名が1910億ドルの資産を所有するという、極端な所得格差が両国で生じている。中国とインドは、所得格差に加えて、地域格差、産業間格差という問題も抱えている。経済成長からの恩恵を社会的に再配分するには、政府が、教育、医療、インフラ、開発への投資を増やす必要があるが、インドと中国の場合、こうした領域への投資が進んでいない。貧困に苦しむ農業部門を置き去りにするのではなく、中国とインド政府は、インフラ、医療、教育への投資をさらに強化する必要がある。経済・社会格差の増大は両国における貧困層の削減ペースが鈍化し、経済成長を持続させる基盤が政治的・社会的に脅かされていることを意味するのだから。

変化する北東アジアに
アメリカはどう関与すべきか
 ――日中韓の台頭で流動化する北東アジア秩序

2007年11月号

ジェーソン・T・シャプレン 元朝鮮半島エネルギー開発機構政策顧問
ジェームズ・T・レーニー 元駐韓アメリカ大使

いまや、北東アジアには、危険なダイナミクスが出現している。いずれもパワフルでナショナリスティック、しかも反目の歴史を持つ中国、日本、韓国という3カ国が、同時に対外的低姿勢の時代を脱して覚醒しつつあり、パワーを競い合っている。この半世紀にわたって、アメリカは日本、韓国との関係を、北東アジア政策の基盤とし、日韓との関係を基盤に中国とのアジェンダも規定されると考えてきた。だが、そうした前提はすでに崩れ去っている。中国が、独自のコースを描けるような環境づくりにすでに成功している以上、日韓との2国間関係だけでは、今後の北東アジアにおけるアメリカのパワーの十分な基盤にはなり得ない。北東アジアのパワーバランスは変化しており、アメリカは、そうした変化を促している経済、安全保障、人口動態、ナショナリズムという各ファクター、さらには、中国が外交攻勢を強めているという事実を踏まえた、包括的で一貫性のある一連の政策をとる必要がある。

パキスタン軍部とその情報機関である軍統合情報部(ISI)は、クーデター、武装勢力への支援、近隣国の内政への介入などを通じて、建国以来、一貫してこの国の政策決定の中枢を担ってきた。だが、これまでイスラム武装勢力を外交ツールとして利用してきた軍とISIも、こうした武装勢力を抑え込まない限り、地域的な混乱と不安定化をめぐって国際的にますます批判されかねない状況へと追い込まれている。こうしたなか、軍の支配構図も少しずつ変化しだしているし、ムシャラフの軍参謀長辞任によって、さらに流れが変わる可能性もある。また、チョードリ判事解任の顛末からも明らかなように、裁判所も政治からの独立性をいまや主張するようになった。だが、最大の変化はメディアが力をつけてきていることだ。「すでにニュース情報が、この国の民主化運動のバックボーンを提供している」とみる専門家もいる。また、2003年以降、パキスタン経済は年平均で6・5%の成長を遂げており、こうした経済の拡大もパキスタンにおける政治制度の移行を促すことになるかもしれない。とはいえ、軍の影響力は依然として大きいし、政党も分裂している。来年早々に予定されている議会選挙でこれらの社会変数の何がどう変わるか、パキスタンの政治体制の移行が実現するかどうかが大いに注目されている。

Page Top