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テーマに関する論文

ロシアはなぜ新路線へと転じたか
――もはや合理的取引では問題は解決しない

2008年12月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア担当シニア・フェロー

2008年8月にロシアの戦車がグルジアに攻め入るはるか前から、ワシントンとモスクワを互いに遠ざける対立案件の数はますます増えていたし、より重要なのは、これらの対立を両国の価値観の違いだけではすでに説明できなくなっていたことだ。米ロ関係が悪化しているのは、「そうした対立をロシアの指導者がどう理解し、とらえるか」の認識が変化したことに大いに関係がある。「ロシアとアメリカ(そして欧米世界)との関係は本質的に不平等で相容れない部分があり、独自の道を歩んだほうがロシアの利益をよりうまく確保できる」とモスクワはいまや考えている。
グルジア戦争の余波のなか、もっと厄介な現実が形づくられていくかもしれない。それは、ロシアのパワーがますます強大化し、この国の野望を支えていくことだ。そうしたロシアの影響力の復活が好ましくないのは、工業センターとしてのウクライナ、エネルギーセンターとしてのカザフスタンを含む旧ソビエト地域をロシアが支配するようになれば、世界の主要国のすべてが、国家安全保障概念の見直しを迫られることになるからだ。

核のない世界は実現できる

2008年12月号

アイボ・ダールダー ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ジャン・ローダル アトランティック・カウンシル前会長

世界はより多くの核保有国と核分裂物質、警備体制が十分ではない原子力施設の増殖に特徴付けられる時代へと足を踏み入れつつあり、その結果、核を入手しようとしているテロリストの試みはより簡単になり、核兵器が現実に使用されるリスクも高くなっている。核兵器を暫定的に保有する目的を「他のアクターによる核兵器の使用を阻止することに制限し、アメリカが保有する核弾頭の数を1千個へと削減し、世界におけるすべての核分裂物質の所在を明らかにし、それを監視するための包括的な核管理レジームを立ち上げ、核廃絶に向けた最大限の国際的連帯をとりまとめていくべきだ。いま、核廃絶の道を歩みださなければ、いずれ核兵器が本当に使用される日がやってくるリスクを受け入れざるを得なくなる。

デジタル・インフラで 「スマート化」する世界

2008年12月号

サミュエル・J・パルミサーノ IBM会長兼最高経営責任者

世界はフラット化するとともに、相互に結ばれ、小さくなってきているが、現実にはそれ以上のことが起きている。それは、過去のいかなる時期と比べても、世界がますます「スマート化」されてきていることだ。情報分析を基にシステム、プロセス、インフラをより効率的、生産的に、そしてよりリスポンシブに動かせるようになった。これが、私の言うスマート化された世界だ。それは、デジタル・インフラと物理的インフラが収斂し、一つになりつつあることを意味する。コンピュータの形をしていなくても、コンピュータの機能があらゆるものに埋め込まれている。スマートなインフラを持つことがいまや国や都市の競争力さえも左右している。(S・パルミサーノ)

世界大国への道を歩み始めたブラジル

2008年12月号

フアン・デ・オニス ジャーナリスト

かつては「コーヒー大国」としてしか認知されていなかったブラジルも、いまや石油資源の開発ブームに沸き返り、農業生産性を飛躍的に向上させ、バイオ燃料生産でも世界の先端をいく国に成長した。インフレも低く抑え込まれ、市場経済型の施策に徹し、資本市場を整備したことで、世界から巨額の資金が流入している。国内の貧困と社会格差の問題にも対応策がとられ、いまやブラジルの人々は、「経済の地平線が国境を越えて広がった」という感覚を広く共有している。事実、ブラジルの国内総生産(GDP)の規模は1兆5800億ドルと世界10位にまで拡大した。過去の過ちを繰り返さないためには、未解決の問題への新たな処方箋をみつけていかなければならない。安定と成長を今後も維持していくことが前提になるが、今後、腐敗・汚職の横行、税制改革および労働市場改革の停滞、低い貯蓄率、効率に欠ける公教育制度、高度なスキルを持つ労働者不足という一連の問題をうまく克服していけば、長い間さほど重要な国とみられていなかったブラジルも、ついに「グローバル・プレイヤー」としての地位を手に入れることができるだろう。

Agenda 2009
核のない世界は実現できる

2008年12月号

アイボ・ダールダー
ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ジャン・ローダル
アトランティック・カウンシル前会長

世界はより多くの核保有国と核分裂物質、警備体制が十分ではない原子力施設の増殖に特徴付けられる時代へと足を踏み入れつつあり、その結果、核を入手しようとしているテロリストの試みはより簡単になり、核兵器が現実に使用されるリスクも高くなっている。核兵器を暫定的に保有する目的を「他のアクターによる核兵器の使用を阻止することに制限し、アメリカが保有する核弾頭の数を1千個へと削減し、世界におけるすべての核分裂物質の所在を明らかにし、それを監視するための包括的な核管理レジームを立ち上げ、核廃絶に向けた最大限の国際的連帯をとりまとめていくべきだ。いま、核廃絶の道を歩みださなければ、いずれ核兵器が本当に使用される日がやってくるリスクを受け入れざるを得なくなる。

The Classic Selection 1932
大恐慌

2008年12月号

エドウィン・F・ゲイ
ハーバード・ビジネススクール初代学部長

「今現在の生産力と生活水準を即座に引き上げるために、将来を担保に自由に信用に頼るという戦時の慣習が戦後も続いた。途方もない大量の信用が使われ、乱用されることもしばしばだった。乱用自体は目新しくないが、創造される信用の規模はかつてないものとなった。紙の上での利益を人々が現実にお金に換えだすと、肥大化した信用が収縮しだし、多くの投資家が浮かれた夢から目を覚まし、我を取り戻した。そしてパニックが起きた」

イランの権力と政治構造を解明する
――ハメネイの絶対権力を崩さなければ、何も変わらない

2008年12月号

アクバル・ガンジ イラン反体制派ジャーナリスト

現在のイランが直面する苦境を招き入れたのは誰の責任か。1人を名指しするとすれば、それはイランの最高指導者として過去20年にわたって絶対的な権力を保持してきたハメネイだ。実際、あらゆる権力を牛耳っているのはハメネイで、アハマディネジャドが2009年の大統領選挙で敗れても、事態は何も変わらないだろう。特に外交分野では変化を期待できない。今後イランが本当に変わるとすれば、イラン人が現在のスルタン国家体制を超えて動きだす方法を見つけたときだけだろう。これまでのワシントンの最大の関心は、イスラム共和国の核開発プログラムを阻止し、中東地域におけるイスラエルの戦略的優位を確保することにあった。一方、イラン人の反体制派、人権活動家、民主活動家の目的は、非暴力的なやり方で、自由、人権、連邦主義を模索する民主政治制度を導入することにある。イランと交渉していくつもりなら、ワシントンはハメネイの絶対権力、そして、イランの民主化勢力の立場に十分配慮しなければならない。

CFRインタビュー
米ロ関係の悪化は必然ではない
――軍備管理交渉で米ロ関係の安定化を

2008年11月号

スティーブン・パイファー ブルッキングズ研究所客員フェロー

 「ロシアのグルジア侵略の真意は、モスクワがロシア周辺地域で影響力を再確立することに本気であることを示すことにあり、これこそ、われわれが今後対応を考えていくべき問題だ」。グルジア侵攻をめぐるロシアの真意をこう分析するスティーブン・パイファーは、アメリカの新大統領は、国際ルールを踏みはずした場合にはペナルティーを科すことを明確にモスクワに伝える一方で、核関連物質の管理など、両国が利益を共有している領域では協力関係を強化し、うまくバランスをとる必要があると指摘し、米ロ間の軍備管理交渉を再開することこそ、軍縮を上回るプラスの作用を両国の関係にもたらせるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
金融危機を温暖化対策を
先送りする「口実」にするな

2008年11月号

ケビン・M・コンラッド パプアニューギニア環境・地球温暖化問題担当国連特使

 2012年に期限切れとなる京都合意の後継枠組みをめぐる話し合いが続けられるなか、「世界的な金融危機を前に温暖化対策交渉がないがしろにされるのではないか」という懸念が浮上している。
 「金融危機を地球温暖化への取り組みを先送りする口実にしてはならない」とケビン・コンラッド、パプアニューギニア環境・地球温暖化問題担当国連特使は警鐘を鳴らす。コンラッドは、2007年にバリで開かれた第13回気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、アメリカ政府代表に対して「指導的役割を果たすつもりがないのなら、少なくとも邪魔しないでほしい。出て行ってほしい」と毅然と言い放ったことで知られる人物だ。
 「やるべきことをしない口実、間違った判断を正当化する理屈を探すのは非常に簡単だし、特に政治家はそうすることに長けている」と指摘するコンラッドは、実際には金融危機は「もっともコストのかからない温暖化対策の優先順位を引き上げ、実施する機会を提供している」とコメントし、むしろ困難な現実を前にしても、状況を前向きに捉えるべきだと主張する。「温暖化対策をめぐる不作為は大きなコストを伴うし」、すでにパプアニューギニアは海面上昇によって村の住民が移動せざるを得なくなるほど地球温暖化の悪影響を受けていると同氏は語った。聞き手は、トニー・ジョンソン(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRインタビュー
グローバル化時代の危機には
政府間協調システムで対処せよ
――金融危機対応の教訓

2008年11月号

アン=マリー・スローター プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長

「いまや、そこに存在するのが『グローバルに統合された金融企業』である以上、『金融システムもグローバルに統合されている』ということだ。事実、今回の金融危機においても、主要国の中央銀行当局は協調して流動性を提供している。こうした政府間ネットワークが最初に形成されたのは金融セクターにおいてだった。そう、(1972年に組織された)バーゼル(銀行監督)委員会だ。これ以降、主要国の中央銀行当局の代表者は定期的に会合の場をもってきた。各国の立場を調整し、相互信頼と知識を積み重ねてきた。バーゼル委員会がなければ、今回の危機を前に各国の金融当局が協調行動をとるのは難しかったはずだ」。
 聞き手はリー・ハドソン・テスリク (www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

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